23年7月以降に販売される製品が対象

ニューヨーク州知事が「修理する権利」法案に署名。“骨抜き”との批判も

image:Preechar Bowonkitwanchai/shutterstock.com

米ニューヨーク州のKathy Hochul知事は現地時間28日、2022年6月に州議会で可決された「修理する権利(Right to repair)」に関する「Digital Fair Repair Act(デジタルフェア修理法)」に署名した。2023年7月に発効する。

これまで修理と言えば、メーカーやメーカー指定業者に依頼するしかなく、自分で修理しようにもマニュアルや部材が手に入らないという状況が多かった。

これに対して、近年盛り上がりを見せている「修理する権利」は、名前の通り、製品を消費者自身が修理できるようにするというものだ。

とはいえ、必ずしも消費者自身に修理をさせようというものではなく、たとえば、街角にあるようなサードパーティの修理業者でも純正部品や修理マニュアルを手に入れられるようになる。

こうした動きをうけ、すでにAppleやGoogle、Samsungなどでは、一般的な修理が必要となるパーツの販売を米国や欧州などで実施している。

今回の署名により、ニューヨーク州は米国で初めて修理する権利を法律化したことになるが、当初議会に提出されていたものから、いくつかの変更が加えられている。

まず学校、病院、大学、およびデータセンターで利用する製品は、この州法の対象外とされた。対象製品であっても、メーカー側が取り付けのリスクがあると判断した場合は、個々のパーツではなく組み立て済みのパーツ販売を行える。

また州議会で可決された法案にあった「パスワード、セキュリティコード、セキュリティコードを上書きするために必要な資料の提供」は、最終的に削除された。このほか既存の製品は除外され、2023年7月1日以降に新しく製造・販売される製品のみが対象となっている。

これらの修正に対し、修理技術者で“修理する権利”の擁護者であるLouis Rossmann氏は、「役に立たず、骨抜きにされた」と批判する動画を投稿している。

Hochul知事が署名した覚書には、安全とセキュリティを危険にさらし、負傷のリスクを高める可能性のある問題に対処するため修正を加えたと書かれているが、Rossmann氏は動画の中で、そんなことはデタラメだと主張している。

ともあれ、修理する権利に関する法律の前例ができたことは消費者としては歓迎したいところだ。残念ながら日本の場合、技適の問題などがあり、すぐにスマートフォンの修理パーツなどが一般販売されることは期待できないが、世界的にこうした「修理する権利」の流れが進んでいけば、日本国内の状況も変わっていくだろう。

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