わざと揉め事にしたとの憶測もあり
Spotify、アップルにアプリ更新を3回却下されたと明かす
音楽ストリーミング大手Spotifyは、9月から米国内で30万タイトル以上のオーディオブック配信を開始している(日本での提供は未発表)。そこで同社はアプリ内にオーディオブックストア関連のリンクを追加しようとしたところ、App Storeの審査で何度も拒否され、ようやく承認されたことを明かしている。
これはSpotifyがアップルに対する苦情の詳細を説明するサイト「Time To Play Fair」で述べていることだ。修正版のSpotifyアプリはアプリ内課金(In-App Purchase)規約違反で3度、却下されたという。最終的なアプリでのオーディオブック購入は、App Storeの規則に従うため、同社の理想より余分な9つもの手順を踏む必要があるとのことだ。
Spotifyは、今回の件はアップルによるアプリ市場での新たな「反競争的(独禁法に違反する)な行動」だと主張している。同社は2019年、Apple Musicが独占的立場を利用して不当な収益を得ていると欧州連合(EU)に申し立てており、EUによる調査は今なお続いている。
本来Spotifyが目指していたのは、「アプリを開く」「新たなお気に入りのオーディオブックを購入する」「アプリで聞く」というシンプルなストア体験だったという。つまりアプリ内で直接オーディオブックを探し、購入できるというものだ。
しかし、そのためにはアップルに30%の手数料を支払う必要があり、そうしたくなければアプリ外のストアサイトに誘導する必要がある。しかしアップルは、アプリ外のストアで購入できるとユーザーに知らせる方法について、禁止してはいないものの慎重に規制している。
米New York Timesによると、そこでSpotifyは、App Storeのルールに抵触しないようフローを構築したという。2人の弁護士が設計と開発のプロセスに深く関わり、オーディオブックの価格と購入のリンク入りメールを受け取ることを選ぶような、9ステップもの手順が作られたとのことだ。
アップルは一度はアプリを承認したものの、再びSpotifyからの提出を却下したという。そのためSpotifyは受信メールに購入ボタンを表示しないよう変更し、かわりにSpotifyのウェブストア(上のオーディオブック)へリンクしたとのこと。アップルはこれも拒否したそうだ。
その際アップルは、アプリ内課金の代わりに、ユーザーに直接Call to Action(行動喚起。ここでは商品ページへの直接リンク)メールを送るのを許可しなかったとのこと。Spotifyは最終的に譲歩し、メールの手続きやウェブストアへのリンクをすべて削除し、単に「購入するためにはSpotifyサイトに移動しなければならない」と知らせるに留めた。今週、承認されたのはこのバージョンだ。
アップルのアプリ内購入に関するルールはかなり明確であり、おそらくSpotify側も「アプリ内では商品ページではなく、自社サイトのトップページへのリンクだけが許可」されると認識していたはずだ。
しかし、同社は機会があるごとにアップルが反競争的だとアピールする傾向があるため(アップルやGoogleなどにアプリストアのルールを改善するよう求める「アプリの公平性のための連合(CAF)」を結成しているほどだ)、今回も、App Storeの審査リジェクトを覚悟のうえで、「あえて」やったのかもしれない。
- Source: Time to Play Fair
- via: The New York Times