PS5やXboxのプロセッサーもケラー氏あればこそ

天才エンジニアのジム・ケラー、古巣のAMDが「K12を愚かにもキャンセルした」と発言

Image:JHVEPhoto/Shutterstock.com

ジム・ケラー氏といえば、AMDやアップル、テスラやインテルを渡り歩き、AthlonやZenマイクロアーキテクチャ、Apple A4やA5の設計にも関わった天才エンジニアである。そのケラー氏が、AMDが退社後にARM CPUプロジェクト「K12」を「愚かにもキャンセル」したと発言したことが報じられている。

この発言はケラー氏が「Future of Compute」カンファレンスにて、これまで自らが手がけた様々なプロジェクトの概要やチップ設計の基本について説明した中で飛び出したものだ。それによれば同氏はAMD在籍中にZen 1に取り組み、Zen 2とZen 3の計画も立てたとのこと。最新のZen 4とZen 5プロジェクトはAMD社内の新チームにより設計されるかもしれず、Zen 3がおそらく最後の「ジム・ケラー設計」になる可能性が示唆されている。

ちなみにPlayStation 5もXbox Series X|Sも、搭載プロセッサはともにZen2ベースを採用している。現行の最新据え置きゲーム専用機は、すべて「ジム・ケラー設計ありき」ということだ。

さらにAMD在籍時代、ケラー氏と彼のチームは、Armとx86 CPUのキャッシュ設計が実行ユニットなどがほとんど同じで、2つのプロセッサアーキテクチャの唯一の違いはデコードユニットであることに気づき、新しいチップに取り組んだとのこと。それが「K12」として知られるアーキテクチャであり、2017年のリリース予定とされていたが、5年後の今なお製品は1つも出ていない。

ケラー氏いわく、このK12プロジェクトは本人が退社した後、あるマネージャーによってキャンセルされたそうだ。ほとんどのマネージャは物事を変えることを怖がるが、自らはアーキテクト(設計士)のため、このような変化を怖がらず、AMD時代の仕事は「Fun(楽しかった)」と振り返られている。

古巣AMDの愚痴をいうケラー氏だが、2021年にインテルのシリコンエンジニアリング統括担当の上級副社長を辞任した後に、「技術的には何もしていなかった」と明かしていた。2022年6月現在、同氏はAIチップのスタートアップTenstorrentで社長兼CTO兼取締役CTOを務めている。

ここ最近のスマートフォンやPC向けチップの命運は、実は一握りの天才エンジニアが握っているとも言われる。アップルでM1チップやM1 Pro、M1 Maxの開発を主導したジェフ・ウィルコックス氏もインテルに移籍したと明かしていたが、今後インテル対アップル、Mac対Windows PCの勢力図にどのような影響をおよぼすかが興味深いところだ。

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