【連載】佐野正弘のITインサイト 第221回

新たなサムスンの折りたたみ、新機軸「Galaxy Z Fold8」がもたらす価値

佐野正弘

サムスン電子ジャパンは、新しい折り畳みスマートフォン3機種を8月7日に発売する。従来モデルの正当な後継となる縦折りタイプの「Galaxy Z Flip8」と横折りタイプの「Galaxy Z Fold8 Ultra」に加え、横折りタイプの新機軸である「Galaxy Z Fold8」が新たに加わったことは、既に多くの報道やテレビCMなどで伝えられている通りだ。

サムスン電子が新たに発表した折り畳みスマートフォン3機種。中でも注目されるのは、新機軸のモデルとなる中央の「Galaxy Z Fold8」だ

それだけに注目されるのは、やはり新機軸を打ち出すGalaxy Z Fold8だろう。Galaxy Z Fold8はディスプレイが閉じた状態で10:16、開いた状態で4:3という、これまでにない画面比率を採用しているのが大きな特徴だ。

Galaxy Z Fold8は従来の折り畳みスマートフォンにはないサイズ感が特徴で、閉じた状態では10:16と、パスポートなどをイメージするサイズ感となっている

では実際のところ、このサイズ感と画面比率が、既存の折り畳みスマートフォンと比べどのような違いをもたらしているのだろうか。Galaxy Z Fold8と他のモデル、とりわけ同じ横折りタイプとなるGalaxy Z Fold8 Ultraとの比較を中心に評価してみたい。

まずはGalaxy Z Fold8のボディを確認すると、閉じた状態ではディスプレイが約5.5インチで画面比率は10:16、サイズは81.9W×123.9H×9.7Dmm、質量が約201g。一方のGalaxy Z Fold8 Ultraは、閉じた状態でディスプレイが約6.5インチで画面比率は21:9、サイズが72.8W×158.4H×8.9Dmmで、質量が約215gとなっている。

実際に並べてみるとその違いは明白で、Galaxy Z Fold8 Ultraが従来のスマートフォンに近いサイズ感であるのに対し、Galaxy Z Fold8は1cm近く横長だ。縦が短いことからパスポートのようなサイズ感となっている。

左が「Galaxy Z Fold8 Ultra」、右がGalaxy Z Fold8。並べてみるとサイズ感の違いがよく分かる

スマートフォンに詳しい人ならば、この形状を見て、NTTドコモが2012年に販売していたLGエレクトロニクス製の「Optimus Vu L-06D」を思い出す人もいるかもしれない。この画面比率とサイズ感は、後述する開いた状態を意識してのものではあるのだが、ある意味で往年のスマートフォンを回顧させるデザインとなったことは興味深い。

2012年発売の「Optimus Vu L-06D」は大画面とペン操作に重きを置き、当時としても特徴的な画面比率を採用したモデル。人気漫画「ジョジョの奇妙な冒険」とのコラボレーションモデルが用意されたことでも注目されていた

では、開いた状態ではどうか。Galaxy Z Fold8は開いた状態でディスプレイサイズが約7.6インチで画面比率は4:3、サイズが161.4W×123.9D×4.5Dmm。Galaxy Z Fold8 Ultraはディスプレイサイズが約8.0インチで画面比率はおよそ9:10、サイズは143.2W×158.4H×4.1Dmmと、正方形に近いが実はやや縦長となっている。

そして4:3と9:10という画面比率の違いが大きく影響してくるのが、動画などのコンテンツ視聴時である。動画配信サービスなどで配信されている動画の多くは、スマートフォンのディスプレイで一般的な16:9比率に合わせて作られている。だが、正方形に近いGalaxy Z Fold8 Ultraでは、どうしても上下に生じる黒い帯のサイズが大きくなり、大画面のポテンシャルを発揮しづらい。

一方で4:3比率のGalaxy Z Fold8はディスプレイが横長なので、16:9の動画に完全フィットするわけではないが、それでも黒い帯が占めるスペースはかなり小さく、大画面を生かしやすい。

16:9比率の動画を再生したところ。左がGalaxy Z Fold8 Ultra、右がGalaxy Z Fold8となるが、画面比率の違いもあって、サイズの小さいGalaxy Z Fold8の方がより大きなサイズ感で映像を視聴できる(動画は筆者がGeminiで生成したもの)

漫画などでも同様だ。一般的な電子書籍アプリで漫画を読む際、Galaxy Z Fold8 Ultraはアプリによって1ページ分しか表示されないことが多いのだが、Galaxy Z Fold8は見開きで画面を表示してくれ、サイズ的にも読みやすくなる。

漫画アプリでは左のGalaxy Z Fold8 Ultraの場合、1ページ分しか表示されないことが多いが、右のGalaxy Z Fold8では2ページ分の見開きで表示され、サイズ的にも読みやすくなる(権利の都合上、写真では筆者がGeminiで生成した漫画画像を表示している)

では、SNSなどで人気の高い縦画面動画はどうか。こちらはそのまま再生した場合、画面比率が縦長の、Galaxy Z Fold8 Ultraの方が黒帯の比率が少なく見やすいのだが、Galaxy Z Fold8も縦画面にするとかなり見やすくなる。そうしたことを考えると、やはりコンテンツを楽しむという側面ではGalaxy Z Fold8の優位性が高いことは確かだろう。

SNSなどに多い縦画面の動画を再生したところ。左のGalaxy Z Fold8 Ultraはそのままでも見やすいが、右のGalaxy Z Fold8でも画面を縦に回転することで見やすくなる(動画は筆者がGeminiで生成したもの)

であれば、なぜ画面比率を一般的なコンテンツに合わせて16:9にしなかったことが気になる人もいるかと思うが、その理由は閉じた状態でのホールド感にあるといえそうだ。なぜなら16:9比率のディスプレイは、4:3比率より一層本体の横幅が長くなってしまい、折り畳んだ時に幅が広くなりすぎて片手で持つのが厳しくなるからだ。

Galaxy Z Fold8も横幅が8cmを超えており、バータイプのスマートフォンと比べ片手では幅広で、持ちづらさがあると感じる。開いた状態で横長ながらも、片手で持てることも両立する必要があったため、開いた状態では4:3という比率に落ち着いたのではないかと考えられる。

Galaxy Z Fold8を片手で持ったところ。閉じた状態の横幅が81.9mmと、スマートフォンとしてはかなり広い部類に入るため、バータイプのスマートフォンと比べると片手では持ちづらい

一方で、実際に使ってみるとGalaxy Z Fold8は、Galaxy Z Fold8 Ultraと比べて弱みもいくつかある。ディスプレイサイズ自体はGalaxy Z Fold8 Ultraの方が広く、画面を縦に分割すればスマートフォンに近い比率で2つの画面を利用できるので、ビジネス用途などで何らかの作業をする際には、Galaxy Z Fold8 Ultraの優位性が高い。

大画面を有効活用するという側面でいえば、分割して一般的なスマートフォンに近い比率の画面を2つ利用できるGalaxy Z Fold8 Ultraに優位性がある

より大きな弱点と感じるのがヒンジである。Galaxy Z Fold8はヒンジを90度以上開くと自動的に本体が開いてしまうため、本体を折り曲がった状態で固定するのが難しいのだ。

それゆえGalaxy Z Fold8には、ディスプレイを折り曲げた状態で画面を分割し、上下で異なる機能を利用できる「フレックスモード」が用意されていない。大画面をコンパクトに持ち運ぶ以上の使い方はできないことから、折り畳みの構造を有効活用するという意味でもGalaxy Z Fold8 Ultraの存在価値は大きいだろう。

本体を折り曲げた状態でカメラアプリを起動したところ。左のGalaxy Z Fold8 Ultraはフレックスモードにより画面が上下に分割されているのに対し、右のGalaxy Z Fold8は画面が分割されず、折り曲げる前のインターフェースから変わっていない

そもそも大画面よりコンパクトさを重視したいという人にとっては、縦折りタイプのGalaxy Z Flip8の方が依然優位性がある。Galaxy Z Flip8も背面のカバーディスプレイでウィジェットだけでなく、端末内のアプリを自由に使えるようになるなど、より柔軟性が増し、使い勝手が向上している。

縦折りタイプの「Galaxy Z Flip8」もいくつか進化を遂げており、背面ディスプレイで端末内のアプリを活用しやすくなっている

そうしたことを考えると、大画面をビジネスなどに活用しやすいGalaxy Z Fold8 Ultraと、コンパクトさや気軽さ重視のGalaxy Z Flip8に、コンテンツ視聴というニーズに対応し中間を埋めたGalaxy Z Fold8を追加した今回のラインアップは、とても理にかなった内容と見ることができそうだ。

それだけに惜しまれるのは、円安とメモリ不足などで価格が大幅に高騰してしまったことであり、価格を理由に購入を敬遠する向きが強まってしまったのは残念だ。

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