Twitterでのマスク氏「言論の自由は認められるべきだ!」

SpaceX、マスクCEOを非難する公開書簡を記した従業員らを解雇。労働法違反の指摘も

Image:Sundry Photography / Shutterstock

先週、民間航空宇宙企業のSpaceX社内では、ここ最近のイーロン・マスクCEOの自由すぎる行動に抗議する公開書簡が回覧された。この書簡は主に、マスク氏にかけられているセクハラ疑惑を糾弾する内容となっているが、文書の作成には「性別、民族、年功序列、技術的役割などの垣根を越え」た複数の従業員が協力したとされている。

抗議文の内容についてThe Vergeは、「公の場におけるイーロンの行動は、特にここ最近、われわれにとって頻繁に混乱や困惑を引き起こしている」「イーロンは当社のCEOであり、最も著名な広報担当者としてこの会社の顔と見なされている。彼のツイートは実質的に会社の公式声明であるが、彼のメッセージがわれわれの仕事内容やミッション、価値観を反映していないことをチームや将来の人材に明らかにすることが重要だ」といった内容だったと伝えている。

書簡にあるようなマスク氏のツイートを振り返ってみると、たとえば4月にはマイクロソフト共同創業者、ビル・ゲイツ氏の画像と妊娠した男性の絵文字画像とともに下品な言葉をツイートしており、さらにさかのぼって昨年には、ジェフ・ベゾス氏のBlue OriginがNASAの月着陸線契約をSpaceXに与えたことに対して抗議した際、やはり卑猥な言葉ととれるツイートを発していた。また、いまから約1か月前には、マスク氏が元CAの女性からマッサージの施術を受けている最中に身体の一部を露出し、馬を買ってやろうかと言ったとの疑惑がBusiness Insiderによって報じられている

書簡では、こうしたマスク氏のツイートや疑惑に絡むような行動が、SpaceXが掲げる「No Asshole」ポリシーとセクハラに対する「ゼロ・トレランス・ポリシー」をまったく遵守していないと指摘している。約2600人のメンバーがいるSpaceXの社内Teamsチャンネルでも書簡の主旨を支持する多数のコメントが寄せられ、署名した人数は最終的に404人に上ったと伝えられている。

素行の悪い経営者に対して従業員が声を上げること自体は、別段珍しいことでもない。しかしSpaceXは、今回の書簡が報道されてからほとんど間を置かずに、書簡作成に関わった従業員のうち、少なくとも5人を即時解雇したことを明らかにした。

SpaceX社長のグウィン・ショットウェル氏は「自分の意見を反映していないものに署名するように圧力をかけられ、従業員が不快感や脅迫または怒りを煽られた」と述べ「(書簡作成に)関わった多くの従業員を解雇した」とショットウェル氏はメールに記している。そして「私たちには達成すべき重要な仕事がたくさんある。このような行き過ぎた行動は不要だ」とした。

しかし、書簡にコメントした匿名の従業員は「書簡は1か月にもおよぶ献身的な努力と多くの従業員の意見による結果だ」と述べ、「書簡に署名するような圧力は誰にもかけられていない」「公開書簡はそれ自体で成立するか、しないかのいずれかでしかない」とし、ショットウェル氏の対応はまったく見当違いだとした。また、書簡には関与していないとするSpaceXの従業員の1人は「今後、イーロンの行動を100%同意しない人は、口を閉ざすか会社を出ていく必要があるのだろう。嘆かわしいことだ」と述べ「われわれは皆、彼の知性は賞賛しているが、彼の社会的行動には容認できないものがあり、SpaceXで働くことが誇りでなく、恥ずべき立場になりつつあることに気づいた」とした。

The Vergeは、書簡の作成に携わった、少なくとも5人の従業員の解雇が報じられた翌日、米国の労働に詳しい弁護士の意見として、この解雇が「(会社に対して)声を上げたことに対する報復と見なされる可能性が高い」「労働者に対し、原則としてあなた方の意見など求めていないといっている」のと同じだとの見解を紹介。解雇が米国労働法に違反している可能性があると語った旨を報じた。

従業員の解雇に関する訴訟では、それが会社からの報復であったことを証明するのが難しいことがほとんどだが、今回の場合はショットウェル氏本人が従業員へのメールのなかで「書簡の作成にかかわった従業員」の「行き過ぎた行動」のために解雇したと記していた。法的には、書簡の内容が従業員らによる労働条件についてのものかどうかが問われる可能性もあるものの、マスク氏の行動によって、業務に「混乱や困惑を引き起こしている」としていることから認められる可能性が高いとされている。

SpaceXでは2020年、女性従業員が会社からのハラスメントを報告した後に報復を受けたとして訴訟を起こした。また昨年12月には元従業員5人がハラスメント問題を誤って処理されたとして苦情を申し立てている。今回の書簡にも「最近の出来事は個々の問題ではなく、広く社内の文化を象徴するものだ」と指摘している。

全米通信労働組合(CWA)は、今回のSpaceXによる解雇に対して「イーロン・マスク氏は言論の自由を約束すると言っているが、従業員が労働条件について発言する、法的に保護された権利を行使することに関しては別のようだ」と皮肉を述べつつ「われわれは、GoogleやActivisionで起こったことのように、これがSpaceXの労働者がひとつにまとまる機会になることを願っている」とコメントしている。

ちなみに、イーロン・マスク氏は16日にTwitter従業員とのビデオ会議において「SpaceXのように企業が彼の個人所有下にある場合でも、プラットフォームのユーザーにとって言論の自由が重要だ」と述べていた。

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