AIチップはスマホ向けSoCより面積がデカいため
アップルがTSMCの「大幅値上げ」容認、iPhone高騰の可能性?

アップルは、台湾TSMCのチップ供給を巡り、AI需要の急拡大によってNVIDIAなどと激しい競争を強いられており、従来のような優先的な立場を失いつつある。その結果、価格上昇を受け入れざるを得ない状況にあると報じられている。
元Bloomberg記者で半導体アナリストのTim Culpan氏は、自身のブログ「Culpium」において、アップルがTSMCの先端プロセス供給を確保するのに苦戦しているとする詳細なレポートを掲載した。15年にわたる協力関係は、TSMCの成長とアップル製品の競争優位を支えてきたが、現在はそこから状況が大きく変化しているという。
TSMCのCEOであるシーシー・ウェイ氏は、2025年8月にアップル本社を訪問した際、ここ数年で最大規模となる価格引き上げを通告し、アップル側はこれを受諾したとされる。その背景には、アップルがTSMCにとって最大の顧客ではなくなった可能性がある。NVIDIAは昨年の一部四半期で首位に立ったとみられ、2026年通年では逆転がほぼ確実視されている。
この変化の主因は、スマートフォン市場の成長鈍化と、AIチップ需要の急増である。TSMCの収益は公式発表によれば昨年36%増の1220億ドルに達したが、HPC(AI用途を含む高性能チップ)は48%成長した一方、スマートフォン向けは11%増にとどまった。アップルがTSMCの売上成長を牽引する存在でなくなったのは、約5年前とされている。
AIチップは、スマートフォン向けSoCと比べて1ユニット当たりに消費するウェハー面積が大きい。そのため、顧客数が少なくても先端プロセスの生産能力を不釣り合いなほど占有することになる。その結果、スマートフォン用途が中心であるアップル向けチップは、TSMCが保有する約20〜30の製造拠点全体において、自動的に優先される存在ではなくなっているようだ。
かつてNVIDIAのAIチップは消費電力の大きさが課題とされていたが、現在は最先端プロセスを積極的に採用し、性能向上と電力効率の改善を追求している。
なぜならデータセンターの電力供給が逼迫するなか、AMDやGoogleのTPUなどから省電力性能面で強い競争圧力を受けているためである。2026年の主力GPUとなるRubinはTSMCの3nmプロセス(N3P)を採用し、次世代のRubin Ultra(2027年)は2nm(N2)採用が噂されている。
今回のレポートは、アップルが高額なプレミアムを支払う意思のあるAI顧客との競合にさらされ、チップ製造コストの上昇圧力に直面する可能性を示唆している。ウェハー不足によって製品出荷が滞る可能性は低いものの、今後は利益率の低下やiPhone価格の上昇につながる可能性は否定できない。
