サムスンの立場が強くなっているため

iPhone向けメモリ、価格は2倍以上に? AI需要がアップルも直撃か

多根清史

Image:iFixit

AIデータセンター需要の急拡大によりDRAMの供給は逼迫し、価格も高騰している。その影響はスマートフォン向け部材にも及び、アップルもiPhone向けメモリ確保に苦慮しているとみられる。こうした状況への対応として、同社がサムスンを主力サプライヤーに選定し、大量供給を受ける方針を固めたと報じられたばかりである。

その直後、アップルがiPhone 17 Pro/Pro MaxおよびiPhone Air向けに採用する12GB LPDDR5X RAMチップについて、230%もの価格上昇を受け入れざるを得ない状況にあるとの報道が浮上した。

Naverブログで知られるアグリゲーター、yeux1122氏によれば、アップルは他メーカーと異なり、DRAM価格高騰前に一定量の在庫を確保していたという。しかし、直近の急激な値上がりを受け、サムスンとの追加契約条件について再交渉を進めているとされる。現行のハイエンドiPhoneに搭載される12GB RAMの調達価格は、当初の25〜29ドルから現在は70ドル以上へと上昇しており、実に230%超の値上がりである。

アップルは伝統的に、単一依存を避けるため1つの部材について複数のサプライヤーを使い分けてきた。RAMについても、サムスンのほかMicronやSK hynixなど複数社から調達し、長期契約によって価格変動の影響を抑える戦略を取ってきた。通常であれば、こうした体制により急激な値上げは回避できるはずだが、今回は例外的な状況といえる。

背景には、メモリメーカー各社が利益率の高いHBM(高帯域幅メモリ)の生産を優先し、汎用DRAMの製造能力が圧迫されている事情がある。加えて、アップルとサムスンの長期供給契約が間もなく期限切れを迎えることから、アップル側も価格引き上げを含めた再交渉を余儀なくされているようだ。

アップルは、iPhoneやiPad Pro向けの有機ELパネルについてもサムスン依存を避けるため、LGディスプレイや中国BOEといった調達先を増やし、価格交渉力の維持に努めてきた。しかし、現在のDRAM不足は深刻であり、年間約2億3000万台規模のiPhone向けに安定供給できるメーカーは、事実上サムスンしか存在しないとされている。

アップルは他メーカーの可能性も調査しているものの、現時点でサムスン以外に十分な供給能力を持つ代替先は確保できていないという。一方で、サムスンはiPhone 17向けDRAM供給の60〜70%を担うと報じられており、主導権を握っている。iPhone 18シリーズは来年2月に量産開始とみられるため、アップルにとって調達先の多角化やコスト対策は急務といえる。

もっとも、アップルはモデムチップを自社開発へ切り替えることで、クアルコムに支払ってきたコストの削減に成功している。iPhone 18シリーズおよび折りたたみiPhoneには、次世代モデム「C2」が採用される見通しであり、部品コスト全体では一定の相殺効果も期待される。

なお、DRAM不足は2027年末まで続くとの予測もある。今後はスマートフォン市場全体で、ハイエンド向け16GB RAMモデルが姿を消し、廉価モデルでは従来標準だった8GBから6GB、あるいは4GBへと縮小される可能性も指摘されている。アップルがiPhoneの基本性能を妥協するとは考えにくく、かなりの値上げもあるかもしれない。

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