地球低軌道より遠くへ飛行士が進出するのは1972年のアポロ17号以来

NASA、有人月周回ミッション「アルテミス2号」を早ければ2026年2月にも打ち上げへ

Munenori Taniguchi

Image:NASA

NASAは有人月面探査を目的とする「アルテミス計画」の計画の2つ目のミッションである「アルテミス2号」で月周回軌道に4人の宇宙飛行士を送り込む予定だ。そして、火曜日にジョンソン宇宙センターで開かれた記者会見では、その打ち上げを、早ければ2026年2月5日に始まる打ち上げウィンドウ内に実行すべく取り組んでいると述べた。

現在、打ち上げに向けた訓練の最中であるアルテミス2号の飛行士たちは、NASAが開発する巨大ロケットSLS(Space Launch System)に搭載されたオリオン宇宙船(通称:Integrity)で月周回軌道へと向かう。このミッションでは月面着陸は行われず、オリオン宇宙船は10日間にわたって月を周回したのち、地球に帰還する予定だ。このミッションが成功すれば、次はアルテミス計画として初めて宇宙飛行士を月面に降り立たせる「アルテミス3号」ミッションが待っている。

月面への着陸こそないものの、アルテミス2号ミッションは初物づくしのミッションになる。まず、このミッションはアルテミス計画「初」の有人宇宙飛行だ。これは1972年のアポロ17号以来「初」の、人類が地球低軌道よりも遠くへと進出するミッションである。

その飛行の最中に、オリオン宇宙船は月面から最長9000マイル(1万4500km)の距離に到達する可能性がある。もしそうなれば、あのアポロ13号がトラブルのさなかに残した、人類史上最も地球から遠く離れた記録を塗り替えることになるという。もちろん、女性「初」、および有色人種「初」の月周回軌道への到達も忘れてはならない。

様々な「初」に挑戦するアルテミス2号だが、これに搭乗予定の飛行士のひとりであるビクター・グローバー氏は、あえて「初」については考えないようにして、やるべきことに集中していると述べている。

NASAは2022年11月にアルテミス1号の月周回軌道への無人試験飛行に成功して以来、アルテミス2号の打ち上げを何度か延期してきた。しかし今回の発表で、NASAのショーン・ダフィー長官代行は、アルテミス計画は米国が国際舞台、特に中国との競争力を維持する上で極めて重要であり、米国は宇宙飛行士を月に送るという新たな宇宙開発競争を争っていると述べた。

アルテミス2号のクルーのひとりで、カナダ宇宙庁の宇宙飛行士であるジェレミー・ハンセン氏は、ミッションが宇宙開発競争のなかで行われるという認識もわかるが、一方でミッション実現のための国際協力の有益さも感じているとした。ハンセン氏はただ卓越性を追求することが、われわれの国々を前進させる方法だとし、更に重要なこととしてそれが「他者との協力を促す環境を作り出す方法」でもあることだと述べた。

また、グローバー氏は「われわれはともに歩んでおり、ミッションの成功はバトンタッチによって築かれます。その始まりがアルテミス3号で、これが我が国と協力各国が月面へ再び戻るための基盤となる」のだと語った。

ちなみに、NASAはアルテミス2号の打ち上げが早くて2026年2月5日になると述べたが、打ち上げウィンドウはこの日から4月26日までに3度、約5日間ずつある。NASAは昨年12月の段階では2026年4月の打ち上げ開始が目標だと述べていた。

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