しかしNVIDIA製チップの密輸は盛ん

中国当局、NVIDIA製AIチップ購入を禁止。国産チップ普及を促す狙いか

多根清史

Image:Below the Sky/Shutterstock.com

中国のインターネット規制当局が、国内大手IT企業に対しNVIDIA製AIチップの購入を禁止したと報じられている。

事情に詳しい関係者3人によれば、中国サイバースペース管理局(CAC)はTikTokの親会社ByteDanceやAlibabaなどに対し、中国向けにカスタマイズされた「RTX Pro 6000D」のテストと注文を停止するよう指示したという。

複数の企業は数万台規模のRTX Pro 6000Dを発注する意向を示し、NVIDIAのサーバーサプライヤーと検証を進めていたが、CACの指示を受け作業を中断したとのこと。

今回の禁止措置は、従来のH20チップに関する規制を超えるものである。CACは中国国内のAIチップが中国向けNVIDIA製品と同等の性能に達したと判断し、国産チップ普及を促す狙いがあるとみられる。

NVIDIAのジェンスン・ファンCEOは、この決定に「失望した」と述べつつも、米中間の政治的課題を理解した上で忍耐強く対応する姿勢を示している。

そもそもの発端は、前バイデン政権下の米政府がNVIDIAの高度AIチップ輸出を禁止したことにある。NVIDIAは中国市場向けにデチューン版チップを開発したが、現トランプ政権下ではそれすら一時的に輸出禁止となり、その後は売上の15%を米政府に支払う条件で許可された経緯がある。

一方、中国政府は半導体産業強化と米国依存からの脱却を進めており、ファーウェイ、Alibaba、BaiduなどがAIチップ開発を加速している。

今後、表向きにはNVIDIAの中国売上は減少すると見込まれる。ただし、2025年の数か月間で約10億ドル(約1400億円)相当の同社製AIチップが東南アジア経由で中国に不正流入し、闇市場で取引されていると報じられており、中国政府と民間企業の思惑が必ずしも一致していないことがうかがえる。

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