お待たせしすぎました

Spotify、ようやくロスレス配信開始へ。Premiumから追加料金なし

Munenori Taniguchi

Image:Spotify

音楽ストリーミングサービスのSpotifyは、8年ほど前に初めてうわさが立ちのぼり、2021年に「Spotify HiFi」なる名称で提供を約束して以降もなかなか導入しなかったロスレスフォーマットでの音楽配信を、今日から10月末までに日本を含む世界50以上の市場で開始すると発表した。

ようやくやってきたSpotifyのロスレス配信は、開始されればPCのデスクトップ環境だけでなく、スマートフォンアプリ、タブレットアプリ、数々のSpotify Connect対応製品で利用できるようになる。Spotifyによると、ロスレスオーディオが利用可能になったユーザーには、アプリ内で通知が届くとのことだ。

Image:Spotify

ライバルのApple Musicは、2021年6月から追加料金無しで最大192kHz/24bitのハイレゾフォーマットでのストリーミングを提供している。その間、待てど暮せどSpotify HiFiはやって来ず、320kbpsを「クソ音質」として業を煮やし、ジョー・ローガンなどの物議を醸す番組が注目を集めるポッドキャストにばかり注力するSpotifyに嫌気が差したニール・ヤングら一部のアーティストは、Spotifyでの作品配信を取りやめたりもした(後に戻った)。

最近でも、Spotifyはほとんど誰も期待していなかったDM機能やユーザーが保存した音楽を整理しやすくなるスマートフィルター機能の提供といった道草を食い、HiFiやるやる詐欺状態を続けて来た。高音質配信を期待して待ち続けて来たユーザーはもはや「Spotify HiFiなんてなかったんや」と思い始めていたかもしれない。

さらにぶっちゃけてしまえば、Spotifyの配信が44kHz/24bitのロスレスフォーマットになったところで、これまでのOgg/Vorbis 最大320kbpsやAAC 最大256kbpsでの配信から劇的に音質が良くなったように感じる人はそれほど多くないかもしれない。

だがそれでも「ロスレスで聴いている」という満足感は、これまでのSpotifyでは得られなかったものになるだろう。

一応説明しておくと、今回ようやく提供されることになったロスレスストリーミングのフォーマットは、最大で44.1 kHz/24bitのフォーマットとなっている。CDに収録されるフォーマットであるCD-DA形式が44.1kHz/16bitなので大差ないように思えるが、日本国内(JEITA 電子情報技術産業協会 2014年 公告)では、「ハイレゾ」の定義を「CD(44.1kHz/16bit)またはDVD、DATの音質(48kHz/16bit)よりも高音質なフォーマットであること」と大雑把に規定している。

つまり、理屈上は44.1 kHz/24bitでもハイレゾと言い通すことはできる。理論的にも、16bitは2の16乗、すなわち6万5536段階まで音量を分解できるのに対し、24bitの場合は2の24乗なので、音量を1677万7216段階に区切ることが可能となる。つまり、24bitのほうが約256倍も音量の差異を表現できるので、 厳密には音質が良くなるであろうことは間違いない。

なお、少しでもSpotifyのロスレス音質を、そして音楽全般を良い音で楽しみたい方は、AV/オーディオ情報を専門的にお届けする姉妹サイトのPHILE WEBもチェックいただきたい。

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