トランプ関税のコストを相殺するため人件費を削減

「iPhone自動製造」目指すアップル、サプライヤーに工場への投資を要求か

多根清史

Image:asharkyu/Shutterstock.com

アップルはサプライヤーに対し、製造コスト削減を目的として工場の自動化への投資を強く要求していると報じられている。

台湾の電子業界誌DigiTimesによると、自動化への投資を怠ったサプライヤーは、iPhoneを含む関連契約を失うリスクを抱えるという。これは効率向上だけでなく、従業員数を削減することでコスト削減を図る狙いがあるとされる。もともとアップルは製造の自動化を急いでいたが、それを加速する動きだ。

従来、アップルはサプライヤーの生産ペース向上に必要な設備について、かなりの割合で資金支援や機材調達の負担を引き受けてきた。だが現在は、サプライヤー自らが大規模な自動化投資を行う必要があり、アップルが支援するのは環境関連投資の一部に限られるという。投資負担の多くは、サプライヤー側にかかる状況とみられる。

アップルが自動化を急ぐ背景には、トランプ政権のもとで続いている対中高関税の影響がある。同社はiPhoneの生産拠点をインドなどに分散させているが、数千にも及ぶ部品は依然として中国から調達しており、サプライチェーンから中国を完全に切り離すことはほぼ不可能である。

そのため中国を拠点とするサプライチェーンが今後も維持される見込みであり、生産効率向上とコスト削減のためにサプライヤーへ自動化を迫るほかない状況にある。また、自動化によって労働依存度を下げることで、過去に起きたサプライチェーン混乱による損失リスクの軽減も目指しているとされる。

ただし、この手法には問題点もある。生産拠点を置く国々で雇用が縮小してしまう点である。トランプ政権が米国内の雇用創出を強く求めているのと同様に、各国政府が工場以外の分野での雇用増加を要求する可能性もあり、アップルが不安定な立場に置かれるリスクも考えられる。

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