中国市場ではファーウェイとの厳しい競争に晒されそう

NVIDIAとAMD、中国向けGPU売上の15%を米政府に支払いへ

多根清史

Image:jamesonwu1972/Shutterstock.com

NVIDIAとAMDが、中国向けの制限付きGPU販売による収益のうち15%を米国政府に支払うことで合意したと、英Financial Timesが報じている。

ここ数年、米国政府は国家安全保障を理由に、中国本土および香港向けの高性能AIチップ輸出を制限してきた。これを受け、NVIDIAとAMDは2024年以降、中国市場向けに輸出可能な制限付きGPU「H20」と「MI308」をそれぞれ開発・投入した。しかし、現トランプ政権下ではこれらも一時的に中国向け輸出が禁止される事態となっていた。

今回のFT報道によれば、2025年7月に米国政府が制限付きGPUの中国向け輸出ライセンスを再開し、NVIDIAとAMDは条件付きで販売を再開したという。その条件の一つが、中国での売上の15%を米国に支払う義務である。

これまでの輸出禁止により、NVIDIAは直近の四半期で約80億ドル(約1兆1000億円)の売上機会を逸したと推定されている。一方、AMDもMI308チップの販売停止で、2025年第2四半期に約8億ドル(約1100億円)の売上機会損失を計上していた

15%の支払いは売上に対する割合であり、利益率は低下するものの、両社にとって収益化は可能と見られている。価格調整によって一部コストを吸収できる余地はあるが、ファーウェイなど中国企業との競争も激しく、大幅な値上げは難しい状況だ。

さらに7月末には、中国のサイバースペース管理局(CAC)がNVIDIAを呼び出し、H20チップに関する潜在的なセキュリティ脆弱性について説明を求めたと報じられている。中国側は、このチップに「追跡」や「遠隔シャットダウン」機能が統合されている疑いがあると指摘。実際、米国議員の一部は輸出される半導体にこうした制御機能を義務付けることを提案していた

一方で、ファーウェイは自社開発のAIチップを武器に中国市場でのシェア拡大を進めており、NVIDIAとAMDは今後も厳しい競争を強いられる可能性が高そうだ。

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