これまでも様々な駆け引きあり

マスク氏、iPhone衛星通信をめぐりアップルと衝突か。Globalstarにも法的圧力

多根清史

Image:Thomas Dutour/Shutterstock.com

SpaceXのイーロン・マスクCEOが、衛星通信機能をめぐってアップルと対立していると報じられている。

ニュースメディアThe Informationによれば、マスク氏はアップルがiPhone 14でGlobalstarと提携し、衛星通信機能を発表する計画を知ったうえで、SpaceXがiPhone向けに18か月間の独占契約を提案していたという。この契約は、前払い50億ドルに加えて、年10億ドルを支払うという大型のものであった。

マスク氏は「72時間以内に合意しなければ、iPhone向けの独自衛星機能を発表する」とアップルに警告したが、アップルはこれを拒否。その後、実際にSpaceXはT-Mobileと提携し、Starlinkを用いた圏外地域でのテキスト送受信サービスを発表した。これはiPhone 14の正式発表の2週間前に行われており、当時マスク氏は「アップルと有望な会話をしている」と述べていた

さらに、SpaceXはGlobalstarの電波帯域使用に対して法的異議を申し立て、iPhoneの衛星サービスを妨害しようとしたとされる。具体的には、Globalstarが2023年に新たな衛星の打ち上げを申請したことに対し、「すでに確保している周波数帯域を十分に活用していない」と主張し、競争を阻害する目的で独占しようとしていると非難した。

SpaceXは規制当局への書類においてアップルの名も挙げて批判しており、アップル幹部を苛立たせたという。また、アップル側は、マスク氏がトランプ政権と親密な関係にあることを警戒しており、FCC(連邦通信委員会)でマスク氏側が有利な立場を得る可能性を懸念しているとのこと。こうした経緯は、The Wall Street Journalも独自の取材に基づいて報じていた

最近では、マスク氏がSpaceXとT-Mobileの衛星通信サービスをiPhone 14以前のモデルにも対応させるようアップルに要請したが、アップルがこれを拒否したため、マスク氏の不満がさらに高まったとされている。

マスク氏はこれまでもアップルと対立しており、Twitter(現X)買収直後には、アップルが広告出稿を削減したことや、App Storeにおけるアプリ内購入に30%の手数料が課されることなどに対して強い不満を表明していた。近年アップルはトランプ政権との関係にも軋轢を深めているが、そこにトランプ氏と近しいマスク氏がどのように関わっていくのかは、今後の注目点といえるだろう。

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