しかし米国App Storeに『Fortnite』が戻るかどうか不明

Epic Games、アップルとの訴訟で10億ドル以上の負担か。それでも「価値があった」と主張

Image:mundissima/Shutterstock.com

今月初めから米国のiOS版Kindleアプリに「Get Book(本を入手)」ボタンが追加され、アプリ内から直接Amazonの購入サイトに飛べるようになった。同様にSpotifyアプリも公式サイトに移動できるようになり、App Storeの手数料を回避した購入が可能となっている。これらの変化は、Epic Gamesとの訴訟でアップルが敗訴し、米国内のApp Store規約が変更されたためである

Epic Gamesのティム・スウィーニーCEOは、法廷闘争だけで1億ドル以上、総合的には10億ドルの負担があったとしつつも「その価値はあった」と語っている。

ことの始まりは、Epic GamesがiOS版『Fortnite』に独自決済システムを導入し、App Storeの30%手数料を回避しようとしたことだった。アップルはこれを規約違反と見なし、Epicのゲーム全てをApp Storeから削除。両社は法廷で争うこととなった。

裁判ではアップルが基本的に勝利したが、裁判所はアップルに対し、開発者が独自チャネルでアプリ内販売を行えるよう許可し、手数料を徴収しないよう命令。しかしアップルは判決に従わず、外部リンクでの購入にも27%の手数料を課し続けた。

これに対しEpic Gamesが再び提訴。裁判官はアップルが「宣誓の下で虚偽の証言をした」と認定し、命令の履行を強制した。結果、アップルは5月1日に米国でApp Store規約を修正している

ただし変更は「米国のストアフロント」に限定され、日本のKindleアプリなどでは外部購入リンクは適用されていない。また、アップルは判決を不服として控訴を予定している。

スウィーニー氏は、この訴訟によってEpic Gamesは10億ドル以上の損失を被ったと米Business Insiderに語った。その内訳は、次の通りである。

  • 法的費用:1億ドル以上
  • 失われた収益:数億ドル(Fortniteは2年間のiOS展開で約3億ドルを稼いでいた)
  • iOSユーザーへのアクセス喪失による間接的な影響(直接プレイできなくなった人や、その友人も含む)

さらに同氏は「自由は高すぎる代償では買えない」と述べ、今回の闘争には意味があったと強調した。

とはいえEpic Gamesにとっての「価値」とは、米国のApp Storeに『Fortnite』が復帰することだろう。判決直後、スウィーニー氏はX(旧Twitter)で数日以内にiPhoneに戻るだろうと投稿していた

しかし、アップルは米国におけるEpic Gamesの開発者アカウントを復旧していない。EpicはEUでの開発者アカウント開設を予定しているが、著名なアップル評論家ジョン・グルーバー氏は、アップルがそれを許可するかどうか疑問視している。

グルーバー氏は「アップルが望めばこの4年間にいつでもFortniteを戻せた」と語り、今回の判決にもアップルがEpic Gamesを復帰させるべきとは一言も書かれていないと指摘した。

もしもアップルが米国App Storeに『Fortnite』を戻さなければ、裁判官の心証に悪影響を与えそうだが、今後の動向に注目したいところだ。

関連キーワード: