SpotifyもApp Store課金を回避するiOSアプリアップデート申請

Epic Games、“App Store課金”を回避できる新機能発表。アップル敗訴受けて

多根清史

Image:mundissima/Shutterstock.com

4月30日、米連邦地裁はEpic Games対アップル訴訟において、アップルに対して厳しい判決を下した。この判決直後、Epic GamesはiOSアプリ開発者が自社のウェブショップをEpic Gamesストア上に開設できる新機能「Epic Games Store Workshops」を発表した。これにより、開発者はアップルのアプリ内課金(IAP)を経由せず、アプリ関連のデジタルアイテムを販売できるようになる。

今回の判決は、アップルにApp Storeポリシーの抜本的な見直しを求める内容となっており、具体的には以下の3点が明示された。

  • iOSアプリ内に外部決済へのボタンやリンクを設置することを妨げてはならない
  • App Store外で行われた購入に対して、アップルが手数料を課すことを禁ずる
  • 外部決済を選んだユーザーに対し、警告画面を表示して利用を思いとどまらせる行為を禁ずる

とりわけ裁判所が問題視したのは、アップルが外部決済に対しても27%という高額の手数料を課していた点、そしてユーザーに対して「外部決済は安全ではない」と警告を表示していた点である。

新たにEpic Gamesが発表した「Epic Games Store Workshops」では、アプリごとに年間100万ドルまでの売上には手数料が発生せず、それを超えた部分にのみ12%の手数料が課される。また、ユーザーはショップでの購入に対し5%分の「Epic Rewards(リワードポイント)」を受け取ることができる。

この仕組みは、小規模・インディー開発者にとって大きなメリットがある。年間売上が100万ドル未満であれば完全に手数料ゼロで利用でき、より高い売上が見込まれる場合でも、StripeやShopifyなどの他決済サービスを活用すれば、さらに低コストで運用できるだろう。

こうした動きに呼応するように、音楽ストリーミング大手Spotifyも米国のユーザー向けに、App Store課金ルールを回避する新たなアップデートを申請した。これにより、アプリ内でサブスクリプションの料金やプロモーションを表示できるようになり、ユーザーはアプリから直接ウェブページに移動して、プレミアムプランの変更などもスムーズに行えるようになるという。

Spotifyは「こうした基本的なサービスを、4年前の判決(2021年9月の第一審)以来ずっと提供できなかったのはばかげている」とコメントし、今回の地裁の判断を「これまでで最も大きな前進」と評価している。

裁判所はアップルに対して、即座に命令を履行するよう強く命じており、「さらなる遅延は容認しない」と明言している。アップルはこれに従って変更を実施する方針であるとしつつも、今回の判決に対しては控訴する意向を示している