静止しているローバーを撮影したことはありました

NASA、火星探査ローバー「キュリオシティ」の走行模様を軌道上から初撮影

Image:NASA/JPL-Caltech/University of Arizona

NASAは、火星の表面に約320メートルにわたって伸びる軌跡と、その先端に小さな黒い点としていえる火星探査ローバーCuriosity(キュリオシティ)を捉えた写真を公開した。

この写真は、火星周回探査機Mars Reconnaissance Orbiter(MRO)が、2月28日にHiRISE(高解像度画像科学実験)カメラを使用して撮影したもの。MROはこれまでにも軌道上からローバーの姿を写真に収めたことはあるが、移動中の火星探査車を写真に収めたのはこれが初めてとのことだと、NASAは写真を公開した4月24日に述べた。

写真に写る軌跡は、2月2日に開始された11回分の走行の跡で、Curiosityがシャープ山のふもとにあるゲディズ渓谷流路から次の探査ポイントへ向かっている様子を示している。新たな目的地は、太古の昔に地下水によって形成されたと考えられる、箱型の岩石構造が存在すると考えられている場所だ。

Image: NASA/JPL-Caltech

移動開始から写真が撮影された日まで18日もあるのに、約320mしか動いていないのかと思った人もいるかもしれない。その理由は、Curiosityが最高時速約0.16kmという、非常にゆっくりとした速度で移動しているためだ。Curiosityは地表でのナビゲーション方法をソフトウェアで決定しているが、走行する場所の地形の登攀(とうはん)難易度などによってその速度は左右される。地上のミッション担当エンジニアらも、さまざまな情報をもとに日々の移動計画を建てており、慎重な運用が行われている。

ちなみにCuriosityは、ただ走行するだけならば設計上は時速90mまで速度を上げられる。だが、火星着陸から12年以上が経過して、車輪に穴が開くなどのダメージが蓄積しており、さらにプルトニウムを使った原子力電池(MMRTG)の出力も低下しているなどの事情も、非常にゆっくりとした移動速度の一因かもしれない。

Curiosityはこれまでの間に、ゲイルクレーターの内側に湖と川があったことを示す証拠や、生命の痕跡とも考えられる物質など数々の発見をしてきた。新しい探査エリアでも、われわれに、予想もしなかった新たな発見を伝えてくれることに期待したい。

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