米国のAIチップ輸出規制は前バイデン政権から
米国の規制がNVIDIAに打撃、ファーウェイが中国AI市場を掌握か

今月初め、米トランプ政権は中国向けAIチップの輸出規制をさらに強化し、NVIDIAのH20チップを新たに規制対象に加えた。この措置により、NVIDIAはH20チップを中国本土、香港、マカオに輸出する際、「無期限のライセンス」が必要となり、事実上の輸出禁止措置となっている。
この結果、中国のファーウェイが自社開発のAIチップを武器に国内市場でのシェアを拡大し、恩恵を受ける可能性が高まっている。
NVIDIAは4月15日、米国の対中輸出規制の影響を受け、2025年2〜4月期決算において最大55億ドル(約7900億円)の損失を計上する見込みであると発表した。一方でファーウェイは、米国による制裁下にありながらも「昇騰(Ascend)」シリーズのAIチップを自社開発。なかでも「Ascend 910B」および「910C」は、中国国内のAI企業から高い需要を集めており、その存在感を急速に高めている。
つまり、米政府が中国の技術発展を抑え込むことを狙って発動した政策が、かえって米企業にダメージを与え、中国企業の台頭を助けるという皮肉な結果を招いているわけだ。
さらに、NVIDIAのH20が輸出禁止となった翌日、ファーウェイは新型AIチップ「Ascend 920」を発表。このタイミングは偶然ではなく、米国の規制強化を予測したうえで準備されていた可能性が高い。
このAscend 920は、中国最大の半導体ファウンドリであるSMICによって製造され、2025年後半から量産開始とされている。チップの主な特徴は以下の通りである。
- SMICの6nmプロセスを採用
- 900 TFLOPSの演算性能
- 4000 GB/秒のメモリ帯域幅
- 前世代同様の3Dチップレット設計(垂直積層)
- 前世代(Ascend 910C)比で30〜40%の性能向上
特筆すべきは、SMICが6nmプロセスを実現したと主張している点である。同社はEUV(極端紫外線リソグラフィ)装置の輸入を米国の圧力により禁じられており、以前は7nm以下の先端プロセスは不可能と見られていた。
しかし実際には、SMICは旧式のDUV(深紫外線)装置を用いて7nmプロセスを実現済みであり、今回の6nmプロセスもDUVとマルチパターニング(微細化のための多重露光技術)によって実現した可能性が高い。設計ルールの制約が厳しくコストが高騰するものの、理論上は3nmプロセスまで実現可能という指摘すらある。
トランプ政権がこうした事態を深刻に受け止めて輸出規制を見直すのか、あるいは見なかったフリをするのか。今後の展開を見守りたいところだ。
- Source: DigiTimes
- via: PhoneArena