「ロボット用AIはアウトソーシングできない」
ヒト型ロボット開発のFigureがOpenAIとの提携を解消。自社開発AIを採用へ
ヒューマノイド・ロボット開発ベンチャーのFigure AIを率いるブレット・アドコックCEOは、昨年2月に提携を発表したOpenAIと袂を分かつことをXへの投稿で明らかにした。今後は自社開発したAIモデルをヒューマノイドに搭載し、開発を加速していく考えだ。
Figure AIにとって、OpenAIと提携しているということは宣伝面でもプラスに作用していたはずだ。昨年8月に、Figure AIが新型のヒューマノイドである「Figure 02」を発表したときも、自然言語コミュニケーション部分にOpenAIのモデルを使用していることがキャッチとして有効だった。
ただアドコックCEOによると、OpenAIのモデルは汎用性を重視して構築されているが、ヒューマノイドに適用するようなAIは、特定のハードウェアを動かすことにフォーカスしたエンドツーエンドのAIモデルを構築・適用するほうがより適切なソリューションなのだという。アドコックCEOは「現実世界に大量にAI搭載ロボットを展開する場合は、そのAIをロボットに垂直統合する必要があることがわかった」とし、「ハードウェアをアウトソーシングできないのと同じ理由で、AIもアウトソーシングできない」と述べている。
OpenAIは先頃、米国特許商標庁(USPTO)に提出した書類で、ヒューマノイド・ロボット分野の製品を手がける可能性も示している。そんなときにFigure AIとの提携を解消してしまっては困るのではないかと思う人もいるかもしれないが、OpenAIは他にもいくつかのロボット開発ベンチャーに投資をしており、特にノルウェーの1Xなどは、他の企業が工場や物流の現場向けにヒューマノイドを開発しているのに対し、家庭向けのヒューマノイド・ロボット開発を目指している。
家庭用ヒューマノイド・ロボットについてはFigure AIも将来的に対応する製品を検討しているというが、少なくともいまは優先事項ではない。顧客ニーズを考えると、まだ家庭向けヒューマノイドは時期尚早だろう。それよりも自動車などの生産ラインなどで、人には負荷が高い労働をヒューマノイドでカバーする使い方のほうが現実的だ。実際、BMWは昨年、米サウスカロライナ州の工場でFigure 02の導入を開始したと発表している。なお、アドコックCEOは先日、BMWにつづく大口顧客として「米国最大手の企業のひとつ」と称する新規顧客と契約したことも明らかにしており「今後4年間で10万台」のロボットを生産すると述べている。
アドコックCEOはOpenAIと袂を分かつ決断とともに、今後30日以内にヒューマノイド・ロボットのまったく新しいコンセプトを発表すると述べている。どのようなコンセプトが示されるのかはまだわからないが、アドコック氏の言う「垂直統合されたAI」を備える新型ロボットが示されれば、その進歩の度合いや、AI開発における自立に向けた同社の戦略的方向性がわかるかもしれない。
ヒューマノイド関連企業の多くは、独自のAIモデルの開発に取り組んでいるが、その一方で提携の動きも活発だ。昨年には、ロボットベンチャーとして高い知名度を誇るBoston Dynamicsが、油圧式から電動式に変わったヒューマノイドの「Atlas」に搭載するAIモデルに関して、トヨタ・リサーチ・インスティテュートと提携することを発表している。
- Source: Brett Adcock(X)
- via: TechCrunch