確率1.6%は高いか低いか
最大100mの小惑星、2032年に地球接近。衝突の可能性も少しアリ
昨年12月27日、ひとつの小惑星が地球近傍に発見された。2024 YR4と命名された、大きさが40~100mほどの小惑星は、実は発見される2日前には、地球に最接近し、地球と月の距離の2倍、地球から約80万kmの位置を通過していたことが後にわかった。
そして、この小惑星についてさらに詳しく調査したNASA JPLの地球近傍天体研究センター(CNEOS)によると、2024 YR4は2032年に再び地球を訪れ、同12月22日には衝突する可能性があることがわかった。これは、小惑星が地球に及ぼす危険を10段階評価で表すトリノ・スケールではレベル3の脅威ということになる。この評価に関しては、欧州宇宙機関(ESA)も数日後に同様の判定を下している。
その衝突の確率は、NASAの最新の評価では1.6%となっている。1.6%といえば、まず衝突することはないと言える確率ではある。だが、過去に地球に接近した小惑星と比較すれば、その確率は非常に高いとも言える。これまで最も衝突リスクが高かったのは、2004年12月に発見された小惑星アポフィスで、約2.7%とされていた。
ただ、アポフィスの場合は観測が進めば進むほど地球への衝突リスクがないことがわかり、最終的に衝突はしないと言われるまでになったのだが、今回は当初1.3%と言われていたところが後に1.6%と改められているように、衝突リスクが高まっているのが気になるところだ。
2024 YR4サイズの小惑星が衝突したとしても、地球の生命が絶滅するほどではないと予想されている。ただし、100mもの大きさの巨大な塊が落ちてくれば、甚大な災害になることは免れない。ハワイ大学の天文学者ジョン・トンリー氏はその衝撃は10メガトン爆弾に相当すると述べ、「落下地点から10km以内にあるものが粉砕され、15km範囲まで火災を引き起こす巨大な火の玉が発生する」と予測している。
地球に落下してくる隕石の多くは鉄隕石、すなわち金属の塊だ。しかし、アリゾナ大学の惑星科学者メリッサ・ブルッカー氏によると、2024 YR4は岩石質の小惑星であることがわかっている。岩石質の場合は大気圏への突入時に大気との摩擦や衝撃で爆発する可能性が高い。1908年にロシア・シベリア上空で発生したツングースカ大爆発は、2024 YR4とほぼ同じ大きさだったとブルッカー氏は述べている。
同じような現象として、最近では2013年に、ロシア・チェリャビンスクに落下した隕石の爆発とその衝撃波によって、近隣の町で住宅の窓ガラスが広範囲に割れたことがあった。
2032年12月22日に、2024 YR4が地球のどこに衝突するかはまだはっきりとはわからないが、ドイツの天文愛好家ダニエル・バンバーガー氏は小惑星が衝突に至る経路を研鑽した結果、太平洋から南米北部、大西洋、サハラ砂漠より南のアフリカ、アラビア海、南アジアの一部まで拡がる一帯が、もとも衝突の確率が高いとした。
小惑星2024 YR4は、太陽の周りを偏心軌道で回っている。現在は太陽から遠ざかっていく軌道にあり、徐々に観測するのは難しくなっていく。次に地球に接近し始めるのは2028年からで、再び観測し始めたときに、もし本格的に地球に衝突するルート上にあることがわかった場合、国連宇宙部(United Nations Office for Outer Space Affairs)が事務局を務め、地球近傍天体の脅威への対応を準備する宇宙ミッション・プランニング諮問グループ(Space Mission Planning Advisory Group)は、2022年に実施されたNASAのDARTミッションのように、宇宙機を用いて小惑星の方向を変えさせるミッションを検討し始めるかもしれないという。
ただ、上でも述べたが、いまのところはまだ、2024 YR4が地球に衝突する可能性は1.6%でしかない。心配するのはもう少し観測・分析が進み、さらに状況が詳しくわかるようになってからで良さそうだ。
- Source: NASA JPL