「AI生成コンテンツの著作権」に関する争いは“1965年に決着済み”。米国著作権局述べる
米国著作権局は、今週発表したAIの著作権について記述したガイドライン文書のなかで「著作権とAIに関する問題は、立法改正を必要とせず、既存の法律に従って解決できる」と述べている。
一般に著作権は、「著作物」を創作した人つまり「著作者」に与えられる、自分が創作した著作物を無断で複製されたり、利用されたりしないようにするための権利とされる。
しかし、人工知能(AI)によって生成された素材の利用が拡大するにつれ、何をもって人間の著作物とするのかという疑問が浮上している。
今回、米国著作権局が発表した文書によれば、AIによって完全に創作され、人間の創作者が編集したり手を加えたりしていない作品は、著作権の対象にはならないという。著作権局は、AI生成物に関する著作権論争は、コンピュータ技術が急速に進歩して「著作権に関する難しい問題」が初めて提起された1965年に決着したと主張している。
1965年当時、エイブラハム・カミンスタイン著作権局長は、コンピューター支援による人間の著作物に関する著作権の問題に「万能の答えはない」との考えを示したが、明らかな例外として「結果として生じる作品の表現要素に対する人間の制御が不十分」であるため「コンテンツが完全にAIによって生成された場合、著作権で保護することはできない」とした。現在の著作権局も、その考えに同意している。
ではAIを使って製作された絵画や音楽、映像などは、そのすべてにおいて著作権がないのかといえば、そういうわけではない。著作権局はAI支援による作品が決して著作権で保護されないという意味ではないと述べ「AIが単に著者の創作プロセスを支援するだけなら、その使用によって成果物の著作権保護資格が変わることはない」としている。つまり、著作物にAIの支援を用いた修正作業を施したという程度のことなら、著作権は依然としてもとの著作者にあるとのことだ。
著作権が認められない条件は、創作活動の「結果として生じる作品の表現要素に対する人間の制御・介入が不十分」であることだ。「コンテンツが完全にAIによって生成された場合、著作権で保護することはできない」とされている。
ただ著作権局は、AI技術がプロンプトを通じた出力に対する人間による制御をより多く提供するのであれば、この決定は変わる可能性があると述べた。
たとえば、アーティストがオリジナルの絵をアップロードし、AI に色の変更を指示したり、オリジナルの文章をその著者がアップロードし、AI を使って翻訳したりする場合は、著作者にその権利がある。
著作権局は、「ほとんどの場合、創作過程には人間が関与しており、その貢献が著作者としての資格を満たす範囲ならば、作品は著作権で保護される」と述べ、既存の法律の下で登録申請された何百ものAIアート作品が、その作品の人間が関わった部分の著作権を承認されていることを強調した。
では、画像生成AIに繰り返し生成用のプロンプトを入力し、最終的に意図したとおりの芸術的な画像出力にたどり着いた場合はどうだろうか。意図した画像を得るためにプロンプトを入力した人物に著作権は付与されるのか。著作権局は、「専門の研究者でさえ、特定のモデルの挙動を理解したり予測したりするのには限界がある」と述べていることから、アーティストがそれを実現できるかは疑問視している。そして、「現在一般に利用可能な技術を考慮すると、プロンプトだけでは、AIシステムのユーザーを出力の作成者にするのに十分な人間による制御は提供されない」とした。またガイダンスには「詳細なプロンプトには、ユーザーが望む表現要素を含むことができるが、現時点では、AIシステムが出力を生成する際にそれらをどのように処理するかまでは制御できない」と記されている。
なお、今回発表されたガイダンスでは、インターネットやその他の情報源から抽出された、著作権で保護されているコンテンツを、AI企業が許可や補償なしにAIの強化学習に使用していることをめぐる議論には触れていない。この問題に関しては、知的財産を抽出された側であるアーティストや作家、ニュースサイトなどが、いくつかのAI企業に対し著作物の窃盗だとして訴訟を起こしている。
著作権局はこれらの訴訟には関わっていないものの「著作物に関するAIモデルのトレーニング、ライセンスの検討、および責任の分配に焦点を当てる」別の報告書の作成に取り組んでいると述べている。
ちなみに、インターネット上の著作物を無断で使用したとして訴訟を起こされているAI企業のひとつであるOpenAIは、先日、中国DeepSeekのAIモデル「R1」が、自社のAIモデルからデータを「抽出(Distrill)」した証拠があると主張し、DeepSeekを非難した。
- Source: U.S.Copyright Office
- via: Ars Technica