Snapdragon XシリーズはPCゲームの互換性に難アリ

クアルコム、インテルに買収提案?PC向けチップ事業の拡大を視野か

Image:Ireshetnikov54/Shutterstock.com

半導体大手のクアルコムが、競合企業であるインテルに買収を持ちかけたと米The Wall Street Journalが報じている。交渉は「合意にはほど遠い」ものの、すでに両社はこの件を協議中とのことだ。

チップ設計・製造の老舗であるインテルは、ここ数年にわたり大きな危機に直面している。同社の株価は今年に入ってから約60%も下落しており、さらなる解雇や設備投資の削減などコストカットを打ち出している

2020年、インテルはMacがArmアーキテクチャのAppleシリコンに移行したことで、大手顧客のアップルを失った。また最新のプロセッサーでも深刻な不具合が生じ、PCユーザーを失望させている

同社は2023年、ファウンドリー(半導体の受託製造)事業を強化すべく、イスラエルTower Semiconductorの買収を試みた。が、期限までに規制当局の許可を得ることはできず、断念を余儀なくされている

今回のクアルコムによるインテル買収も、その規模が巨大すぎるため、反トラスト法(独占禁止法)により阻止される可能性が高いとWSJは指摘している。

そのため、クアルコムはインテルの資産や一部の事業を他社に売却することも考えられるという。インテルは2019年、アップルにスマートフォン向けモデム事業を売却しており、前例がないわけではない。

今なおインテルはPC向けチップ市場をほぼ独占しているが、PCメーカーはArmチップに関心を高めつつある。インテルのx86アーキテクチャと比べると、Armは電力効率の高さや発熱の少なさで優位にある。

今年半ば、マイクロソフトや複数のPCメーカーは、クアルコムのArmチップを搭載したWindowsノートPCを発売した。その最上位チップ「Snapdragon X Elite」は、アップルのM3チップをマルチコア性能で上回っている。シングルコア性能や消費電力ではまだまだ及ばないが、それでも数年前からは飛躍的な進歩である。

その一方、Windows Arm PCはゲームの互換性で苦戦している。クアルコムは「ほとんどのWindowsゲームが動く」と主張していたが、マルチプレイゲームに必須のアンチチートはエミュレーションでは動作しないため、対応のメドは立っていない。

もしもクアルコムのインテル買収が実現すれば、PC業界も大きく動きだすことだろう。とはいえ、代替資産運用会社アポロ・グローバル・マネジメントはインテルに数十億ドルの投資を持ちかけているとの報道もある。これが本当であれば、クアルコムの野望は実現から遠ざかるかもしれない。

関連キーワード: