将来的には海外工場で地震リスクを回避か

TSMC、大地震や米工場の高コストを乗り越え「iPhone 17 Pro」用チップを予定通り製造か

Image:Koshiro K.Shutterstock.com

アップルがiPhoneやMacに搭載する独自開発チップは、すべて世界最大手ファウンダリ(半導体受託製造)の台湾TSMCが製造している。つまりTSMCに降りかかる全ての出来事が、同社の命運を左右するといっても過言ではない。

最近TSMCの前には大きな2つの課題が浮上しているが、2025年の「iPhone 17 Pro」モデルに搭載される見通しの2nmチップ、その先にある1.4nmチップの製造に向けた作業は順調に進んでいるとサプライチェーン筋が報じている。

台湾の電子業界誌DigiTimesが言及している、TSMCにとっての難題は次の通りだ。

地震で数十万個のチップが破損

今月初めに台湾東部沖で起きた地震は過去25年間のうち最大であり、TSMCの工場も直撃したことは先日もお伝えした通りだ

最新記事によると、その影響は同社の2nm工場にも及んだという。工場は水害に見舞われ、一部の設備は交換が必要になったとのこと。ただし、今のところテスト用に少量のチップしか製造していないという。

また台湾にあるTSMCの全工場で1万枚未満のウェハー(全プロセスの合計)が破損した可能性もあるが、それらは保険でカバーされるとのこと。

アップルもTSMCもウェハー1枚当たりのチップ歩留まりを公表していないが、2nmチップ(iPhone 17 Proに搭載されると噂の「A17 Pro」と同サイズ)の場合、1枚あたり440チップ程度と推定される。つまり多く見積もっても数十万チップほどではなく、すぐに埋め合わせできる範囲とみられている。

米アリゾナの2nm工場の立ち上げコストが高い

TSMCが地震や地政学的リスクを減らす方法の1つは、海外に先進的な工場を建設することだ。数日前、同社が米政府から巨額の補助金を約束され、将来的に現地で2nmやそれ以上の最先端チップを製造する予定であることも報じたばかりだ。

具体的にはTSMCがアリゾナ州に第3工場を建設するにあたり、米政府は合計116億ドルもの資金援助を提供。とはいえ、同社が3つの工場に投じる資金は650億ドル以上となり、負担が巨大であることに変わりはない。

が、半導体製造装置業界の関係者はTSMCの先行きを楽観視しているという。常に量産スケジュールが不安定な競合他社と異なり、同社はTSMCは公式発表したプロセス・ノード計画だろうと、サプライチェーンに公開したロードマップだろうと予定通りに進められると見ているとのことだ。

TSMCは2nmチップの試験生産は2024年後半から、2025年第2四半期に小規模生産を始める予定。この通りにいけば、iPhone 17 Proモデルは第3四半期に量産がスタートし、例年通り秋には間に合うというわけだ。

これらを総合すると、TSMCの強みは「できることだけを対外的に約束し、実行する」ことと「徹底したリスク管理」のようだ。いずれも日本のハイテク企業が巻き返しを図る上で、学ぶところが多そうではある。

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