アップルは購入後2週間まで返品を受け付けています
Apple Vision Pro、返品理由の3割は「正しい使い方がわからなかった」から?
アップルの情報に詳しいアナリストMing-Chi Kuo氏は、アップルが発売した高価なヘッドセット製品「Vision Pro」を返品したユーザーの20~30%が、その製品の正しい使い方を理解できなかったのが原因だと述べている。
Mediumで水曜日に発表されたニュースレターで、Kuo氏は「返品ユーザーの約20~30%が、Vision Proのセットアップ方法を理解していないせいで返品したことは注目に値する」と述べている。20~30%というと割合が大きいように思えるかもしれないが、同氏の調べによると、実際のところVision Proの返品に至るユーザーは購入者の約1%でしかないようだ。また、出荷台数は20~25万台とされており、これはアップルの当初の予想を上回るペースだという。
とはいえ返品された例において、その理由の多くは、Vision Proが標榜する「空間コンピューター」としての扱い方にユーザーがなじまなかったせいだという。これは、直観的に扱える製品デザインを特徴とするアップルの製品のなかで、Vision Proはややブラッシュアップが足りなかったと言えるのかもしれない。
コントローラーを使う一般的なVRヘッドセットとは異なり、Vision Proはアイトラッキング技術を使い、視線でヘッドセット内の空間コンピューティング領域のフォーカスを変え、ハンドジェスチャーで操作する。むりやりPC操作に当てはめると、視線がマウスカーソルで、ハンドジェスチャーがクリック操作だ。
しかし、それだけではできないこともある。アプリを開く場合はヘッドセットに備えられている物理的なダイヤルボタンのデジタルクラウンを押すようになっている。またコントロールセンターを開くには、視界の上の方を見ると現れる小さな(v)印を見なければならない。こうした操作は他のアップル製品に慣れきったユーザーにとって、まったく直観的ではないだろう。
また使用しているうちに、その重さがじわじわと負担になり、痛みや凝りを誘発したり、目の充血や目が渇くといった症状をきたすとの報告もよく見かけられる。実はこれらは既存のVRヘッドセットでもよくある症状なのだが、Vision Proでヘッドセット製品に興味を持ったユーザーにはそういった言い訳は通用しない。
仮想ワーキングスペースとしてVision Proに期待した人も、仮想キーボードを使うのでは、目で入力する、または手でキーを指定して入力するのは快適ではないとの感想が多いようだ。
Kuo氏は、今年Appleが当初予測したよりも多くのVision Proを販売すると予想されているものの、依然としてそれはニッチな製品にとどまると予想している。いまは使えるアプリが少ないが、既存のVR/ARヘッドセットの枠にとらわれない、柔軟な発想を活かした使い方が提案されるようになれば、そして第2、第3世代になって価格もこなれていけば、大きく普及する可能性はあるのではないだろうか。
ちなみに、アップル情報の詳しさにおいて評判の高いMing-Chi Kuo氏ではあるものの、アップル情報サイト9to5Macは、Kuo氏が所属企業を変えたことに伴い、拠点とする中国においてサプライヤーからの情報が得にくくなっているのではないかと指摘、Kuo氏が示す具体的な数値の信憑性や、憶測に基づく情報発信の増加を懸念しているとのこと。とはいえ、「お試し」でVision Proを購入したユーザーが減ることで、返品の数も少なくなっていくと考えられるため、1%という数字はともかく返品率は今後気にする必要はなくなりそうだ。