在宅勤務ニーズやAppleシリコンの新しさが目減り
2024年のMacBookとiPadは3nmチップ搭載、しかし需要は落ち込むとのアナリスト予想
2024年に3nmチップ「M3」シリーズを搭載した新型MacBookやiPadの発売が確実視されるなか、これら製品の需要は「予想を下回る」可能性があると著名アナリストが主張している。
アップルのサプライチェーンに精通するMing-Chi Kuo氏は、オランダASMLのEUV露光装置につき出荷台数の予測を約20~30%引き下げる可能性があるという。EUVは、TSMCの3nmプロセスノードを初めとして、今後は半導体の微細化に欠かせない加工技術である。
その理由の1つとしてあげられているのが、来年アップルの3nmチップ需要が予想を下回るとの見通しだ。2023年、同社のMacBookとiPadの出荷台数は、それぞれ約30%減の1,700万台、約22%減の4,800万台へと大幅に落ち込んだ。これは在宅勤務(WFH)需要の終焉と、新仕様(独自開発チップとミニLEDディスプレイ)のアピール力が低下したことに起因するという。
そして2024年に目を向けると、アップルの3nm需要は、MacBookとiPadの「成長ドライバー不足」によりマイナスの影響を受けるとのことだ。
つまり新型コロナ禍のもとでの在宅勤務による需要の押し上げや、インテルMacからの乗り換えに駆り立てたAppleシリコン(独自開発チップ)の新しさは色あせ、アップルには過去数年間のような成長エンジンはなくなったということだ。
実際、6月に登場した15インチMacBook Airは、アップル幹部が「顧客が本当に欲しい製品」と自負したのとは裏腹に、少なくとも初期出荷は不調という報道もあった。1年前の13インチMacBook Airと同じM2チップ搭載、他の仕様もほぼ変わらずで「画面が大きくなっただけ」の印象もあったが、在宅勤務・学習の必要が激減した事情も大きそうだ。
また、TSMCの3nm技術に関しても「A17 Proの過熱問題」という不安が生じている。ことは一部ユーザーに留まらず、The Wall Street JournalやBloombergといった大手メディアが報じる事態に至っている。
iPhone 15 Proモデルの設計で「放熱システムの妥協」が原因との推測もあるが、もしも3nm技術に問題があれば、それがMac/iPad Pro向けM3チップに引き継がれるかもしれない。
もっとも、MacやiPad ProはiPhoneより筐体が大きく、熱容量にも余裕があり、同じ問題が起こらない可能性もある。またMacとiPad Proともに有機ELディスプレイ採用が予想されており、ミニLEDを超える成長ドライバーとなる見込みもあるだろう。