誤報の拡散につながりかねない

Twitterが発表した“API有料化”で懸念されること

Image:Mehaniq/Shutterstock.com

米Twitterは2月9日以降、Twitter APIの無料アクセス提供を終了すると発表した。その代わりとなる有料版を開始するとのことだ。

開発者向けのTwitter Devアカウントによれば、Twitter APIのv1.1とv2両方の無料アクセスを打ち切る予定だという。有料APIがいくら請求することになるのかは、記事執筆時点では明らかにされていない。これ以上の詳細は、来週に告知するとされている。

この動きは先月、予告なしにサードパーティ製クライアントが使っていたAPIを停止し、TweetbotやTwitterrificなどを廃止に追い込んだことに続くものだ。これら人気アプリは広告が表示されず、Twitterの収益に貢献しないための措置と推測され、今回のAPI有料化と地続きの可能性がある。

Twitter Devは、自社のデータが「世界で最も強力なデータセットの1つ」だと強調。その上で有料版APIにつき、迅速かつ包括的なアクセスを可能にすると約束している。「長年にわたり、何億人もの人々が1兆回以上のツイートを送信し、毎週数十億回以上送信している」とのツイートは、APIに課金する価値があるとアピールしているようだ。

サードパーティ製クライアント騒動の余波として、その他のアプリ開発者にも、Twitter APIを前提とすることに対して慎重になる動きが広まっていた。今回、有料化が発表されたことで、開発者がアプリを放棄したり、顧客に支払いを求めるなどの選択を採る可能性がある。

何千ものTwitter関連アプリは、そもそも収益化を前提としていない。たとえばTwitterアカウント間の変化を追跡したり、アラートを提供するものなども、それらの一部だ。

より深刻な影響が予想されるのが、研究分野だろう。ネット上でのヘイトスピーチやハラスメント、様々な地域における人間行動の研究は、Twitterを活用することが多い。さらにAPIの有料化は、Twitter上でのフェイクニュースや誤報の拡散を検知しようとする取り組みに歯止めをかけることにもなりかねない。

昨年10月にイーロン・マスク氏がTwitterを買収した結果、同社は約130億ドルもの負債を抱え込むことになった。その利息だけで毎年10億~12億ドルにも上るとの試算もあり、マスク氏としても収益化を急がなければならない事情がある。

しかしTwitterのプラットフォームとしての価値は、外部の開発者との持ちつ持たれつの関係のもとで築き上げられてきた。最初に鳥のロゴを使ったのはTwitterrificといわれ、「引っ張って更新(Pull To Refresh)」やRTもサードパーティ由来であり、それをTwitter公式が取り込んでいった経緯がある。

Twitterが収益化にこだわることは、会社を存続させるためにはやむを得ない。が、それを性急に進めるあまり、これまで付加価値をもたらしてきた才能が逃げ出し、結果として広告主にとっても魅力に乏しくなることがないよう祈りたいところだ。

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