アップル社内でもGlobalStarへの不満が高まっているとの報道も

アップル、衛星通信でStarlink採用の可能性。Globalstarから乗り換えか

多根清史

Image:JOCA_PH/Shutterstock.com

アップルは現在、Globalstarと提携してiPhoneの衛星通信サービスを提供している。だが、SpaceXがStarlinkの持つ大規模なネットワークを拡充していることから、将来的にアップルがそちらに乗り換える可能性が高まっていると報じられている。

アップルはiPhone 14シリーズから衛星メッセージング機能を導入し、緊急時や車の故障時のロードサービス、家族や友人へのメッセージ送信を可能にしてきた。ただし、それ以上の機能はなく、衛星通信の容量制限が課題となっているとみられる。

SpaceXのイーロン・マスクCEOは、過去にアップルに対し、Starlinkへの切り替えを何度も提案したとされている。本人も「有望な会話を交わした」と語っていたが、現時点ではその交渉は実を結んでいない。

しかし、テックメディアArs Technicaによると、この状況は変わる可能性があるという。

ひとつは、SpaceXがEchoStarから1.9GHz帯と2GHz帯の合計約50MHzのスペクトラム(周波数帯域)ライセンスを約170億ドルで買収する計画を進めている点である。これにより、SpaceXは米国内にとどまらず、世界各地でこの周波数帯を利用して衛星通信サービス(電話・テキスト・ブロードバンドなど)を提供できるようになる。

もうひとつは、SpaceXがStarlink衛星の数を現在の約650基から最大1万5000基にまで増やす計画を米FCC(連邦通信委員会)に申請していることだ。新型衛星はより高機能で、より広範な通信を可能にし、通常のスマートフォンを含む多様なデバイスで衛星通信を実現する見通しとされる。

通信アナリストのフィリップ・バーネット氏はArs Technicaに対し、Starlinkの増強された通信容量は「アップルとの契約締結を強く後押しする可能性がある」と述べている。また、Globalstarは「衛星数が少なく、利用可能な周波数帯域も狭い」ため、技術的に制約が多いと指摘しており、Starlinkがアップルに対して優位な立場を築く可能性が高いという。

さらに今年5月、The Informationはアップル社内で「GlobalstarネットワークはStarlinkに比べて時代遅れで速度が遅く、対応できる新機能が限られている」との不満が高まっていると報道。その一方で、SpaceXがGlobalstarによる新たな衛星打ち上げを妨害しようとしたとも伝えていた。

今後、アップルとマスク氏が再び衝突を続けるのか、それとも歩み寄るのか。今後も、両社の動向に注目したいところだ。

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