App Storeはアップルにとって年間3兆円の価値

アップル、App Storeの「手数料引き下げ」の可能性。SpotifyやAmazonの離反に対応か

多根清史

Image:Tada Images/Shutterstock.com

アップルが今後もApp Store決済市場での競争力を維持するため、手数料を引き下げる可能性があるとBloombergが報じている。これは同社の内情に詳しいMark Gurman記者が、アップルが採りうる戦略の一つとして言及した内容である。

先月、米連邦地裁はEpic Games対アップルのApp Store手数料をめぐる訴訟において、アップルの外部決済に対するポリシーについて厳しい判決を下した。これを受け、SpotifyやAmazon Kindleは米国のiOSアプリで外部決済への直接リンクを導入し、ユーザーがアップルの手数料を回避して、より安価にサブスクリプションや電子書籍の支払いを行えるようになっている。

アップルは以前から、開発者に独自の決済システムの実装を許可していた。ただし、外部決済処理の「リスク」を警告する画面を表示させることを義務づけた上で、大手開発者には27%、中小開発者には12%の手数料を課していた。多くの決済業者が約3%の手数料しか請求しないことを考えると、これらの数値は実質的にApp Storeのアプリ内課金(30%/15%)と同じであり、独自決済を導入するメリットをなくしていた。

現在、こうした制限は撤廃されつつあり、上述のように多くの大手デベロッパーがすでにアップルの決済システムから離れ始めている。アップルは判決に対して控訴しているが、判決が覆るまでは代替決済の導入が自由に認められる状態となっている。

Gurman氏は、App Storeは15〜30%の手数料によって、年間で200億ドル(約3兆円)相当の収益をアップルにもたらしていると指摘する。当然ながら、アップルとしてはこの収益をできる限り維持したいはずだ。

そのうえで、「競争力を維持するため」に、アップルが今後講じる可能性のある対応として以下が示唆されている。

  • プライバシーとセキュリティをさらに強化し、開発者の囲い込みを図る
  • 手数料率の引き下げを行う

このうち手数料率の変更について、Gurman氏は「いずれは実施する必要がある」と予測している。

今回の報告は内部情報のリークというよりも、個人的な提言に近い印象もある。とはいえ、アップルが控訴している間にも、既にSpotifyやAmazonなど大手企業の離反が進んでおり、多くの収益を失い続けているのが現状だ。

米国のデベロッパーが自社のアプリ内課金システムを放棄しないよう引き止めるためにも、アップルが手数料をできるだけ早期に引き下げることが、最も理にかなった対応と言えそうだ。

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