映画産業は貿易黒字を産み出す数少ないジャンル
中国が米映画・ドラマの輸入禁止を検討?104%関税への報復として

トランプ大統領による対中国104%関税への報復措置として、中国が米国製の映画やテレビ番組の輸入禁止を検討していると報じられている。
複数のメディアによれば、国営新華社ネットのシニアエディターである劉洪氏と、元広東省共産党主席の孫であるインフルエンサーという、中国の2人の有力メディア関係者がほぼ同時期に、非常によく似た見解を示したという。いずれも中国政府に近い立場にあり、観測気球として発信された可能性もあるだろう。
米Bloombergによると、中国からのあり得る報復措置としては以下が挙げられている。
- 米国映画・テレビ番組の輸入制限
- フェンタニル取引対策における米国との協力停止
- 大豆など米国農産物輸出への関税を「大幅に」引き上げる措置
- 米国の対中サービスに対する制限
- 中国国内で事業展開する米国企業の知的財産権に関する調査
米国製の映画を標的とすることは、おそらく最も効果的な選択肢である。これまでハリウッド映画は「サービス」として扱われ、「商品」ではないという理由から関税の対象外とされており、大きな打撃を免れてきた経緯がある。
中国は近年、自国の映画産業を積極的に育成しており、国内で大きな興行収入を記録するヒット作が続出している。その一方で、米国の大ヒット作の輸入を意図的に減らす傾向が強まっている。
ただし、たとえば『マインクラフト・ザ・ムービー』は先週末、中国の興行収入ランキングで1位を記録している。昨年の『ゴジラ×コング 新たなる帝国』も、中国国内だけで1億3200万ドルという巨額の興収をあげている。世界第2位の映画市場である中国の観客にアピールするために、米国の映画スタジオもさまざまな工夫を凝らしてきた。
また、米メディアDeadlineは、トランプ政権の政策が米国の映像産業すべてに及ぼす影響も指摘している。海外での映画撮影にかかる費用や機材・小道具などの輸入コストが上昇し、Netflixなどストリーミング事業の国際展開にも障壁が生まれるなど、中国以外でも深刻なダメージをもたらす可能性があるという。
トランプ大統領は、米国の貿易赤字解消を目指すとして関税の大幅な引き上げを掲げている。だが皮肉なことに、映画やテレビ番組は米国にとって貿易黒字を生み出している数少ない産業のひとつであり、この政策によってかえって大きな打撃を受けるおそれがある。