ボタンひとつで宙返り

250km/hで移動できる空飛ぶクルマ。マイクロタービン10基で飛行

Image:Zapata/YouTube

Zapata Racingが、マイクロタービン10基で浮上し飛行できるジェット式フライングカー「Jet Racer」を発表した。マルチローター式フライングカーのローターを小型ジェットエンジンに置き換えたような乗り物で、最高速度250km/h、最高高度3,000m、最大200kgの荷物を運搬可能という。

Zapata Racingの創業者フランキー・ザパタ氏は、自ら開発したマイクロタービン式ホバーボード「Flyboard Air」(スパイダーマンに登場するグリーンゴブリンの乗り物に似ている)で空飛ぶパフォーマンスをすることで知られる人物。2019年にはドーバー海峡を横断し、世界にその名をとどろかせた。また今年5月には、そのFlyboard Airがパフォーマンス中に操縦不能となり、きりもみ状態で水面に落下した映像が衝撃的に伝えられていた。

https://twitter.com/Alex170346741/status/1530624066348105735

そのザパタ氏が新たに制作したのがJet Racerだ。空を飛ぶための基本的なしくみはローター式フライングカーとかなり似ているようだが、ローターブレードが小型ジェットエンジン10基に置き換えられているため、何らかの理由で誰かがローターに触れて怪我をする危険性はなさそうだ。

とはいえマイクロタービンには、ローターに比べて騒音が大きく高温になり、さらに細かい推力の制御が難しいというデメリットがある。Jet Racerでは各ジェットの出口側に推力制御装置を取り付け、迅速な応答調整と驚異的な敏捷性を備えている。

またJet Racerにしかない特別な機能が、ボタンひとつ押せば実行できる宙返りだ。これはプロトタイプの機体でもすでに実行可能(紹介動画の開始50秒あたり)になっており、どこかのショーやイベントで、大勢の観客を前にパフォーマンスする際などに、目玉になる機能と言えそうだ。

Jet Racerは空中デモンストレーションやレジャーといった民間用途を想定しているが、一方で軍事・公安向けに偵察飛行や特殊作戦に機動性を与えるといった役割を担当できるとも紹介されている。

ただし販売開始時期や価格などはまだ明らかにされておらず、当面はデモ・パフォーマンス飛行をザパタ氏が自ら行うだけにとどまるかもしれない。Zapata Racingは、ボランティアとして試乗を希望する人を100人ほど募集しているとのこと。そのなかから25人が選抜され、米国内でJet Racerに乗る機会が与えられるとしている。