発売当時の新車価格は450万円(R32 GT-Rと同等)

隣人の日本車を傷つけた米国の消防署長に約7490万円の賠償訴訟。被害車両は“ドリキン”が所有したという「NISMO 270R」

Image:Nissan

米ニュージャージー州の消防署長が、ささいなことからいざこざに発展した隣人のクルマへ、腹いせとばかりにキズを着けたところ、最大50万ドル(約7490万円)の損害賠償を求める訴訟を起こされた。

ことの発端は昨年5月。ニュージャージー州ピスカタウェイ消防署のジョシュ・スコルニック署長は、署の隣に住むマーク・バーナ氏の敷地から署の敷地内へとたびたび排水が流れ込んでくることに苛立ちを覚え、バーナ氏との間で口論になった。その場では両者ともいったん矛を収めた格好に落ち着いたがものの、スコルニック署長は後にバケツ一杯の瓦礫を、隣接するバーナ氏の敷地持ち込み、そこにあった古い日本車にガラガラとぶちまけた。

一般的な感覚なら、1990年代に販売されたちっぽけな日本車の価値など知れたものであり、いまさら多少の傷がついたところで、弁償するにしても大した額にはならないはずだ。その怒りにまかせた行動は、バーナ氏が設置していた防犯カメラの映像ですぐに発覚。署長は、第3級器物損壊罪で起訴され、秩序違反行為の罪も上乗せされ、賠償金として7973ドル(約120万円)を支払う羽目になった。

このクルマの本当の損害額はそれではまったく足りなかった。さらなる損害賠償を求める訴訟を起こしたバーナ氏は、その訴状で、このクルマが1994年に日産シルビア(S14型)をベースとして開発・発売されたNISMO 270Rと呼ばれる車種で、その生産数はわずか30台という超希少車だと述べている。

Image:Nissan

さらに極めつきは、この個体が発売された当時のル・マン24時間でクラス優勝を飾ったレジェンドドライバー、「ドリキン(Drift-King)」こと土屋圭市氏が所有していたものだというのだ。

訴状によると、スコルニック所長がぶちまけた瓦礫は、車に欠損や引っかき傷、へこみなどの「甚大な損傷」を引き起こし、ライトやその他ガラス部品、そしてNISMO 270Rであることを象徴し、被害に遭う前は新品同様のまま維持されていたリバリーステッカーにも傷を残したとされている。

Image:Nissan

そして、バーナ氏はこのNISMO 270Rの購入を希望するコレクターと50万ドルの商談の最中だったが、損害のせいで破談になったと主張した。

Image:Nissan

ただ、自動車メディアのCar Scoopsは、このクルマが非常に希少なのは間違いないが、50万ドルもの価値はないと指摘する。最近の同車種のオークション落札価格が約10.7万ドルだとのことだ。ただし、オークションに出た個体は約13.2万kmを走行しており、アフターマーケットパーツを装着した車両だった。

バーナ氏が主張するように、オリジナルの塗装とリバリーステッカーが綺麗なまま維持された、新車に近い状態のナンバーマッチング車、しかも著名なレーシングドライバーが所有した一品だったというのが事実であれば、かなりの値打ちものであった可能性も否定はできない。なお、バーナ氏のInstagramには、世界ラリー選手権出場車両と同じカラーリングの三菱ランサーエボリューションIVや、日産スカイラインR34 GTR V spec II ニュルなどが並んでいる。

追加の損害賠償の裁判はまだ結果が出ておらず、要求どおりの賠償が認められるかどうかはわからない。仮にいくらか減額された判決が出たとしても、小さな町のボランティア消防署長(米国の消防士は大半がボランティア)には賠償能力がないかもしれない。

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