SNS中毒と似ている?

OpenAIとMIT、「孤独な人がAIチャットボットを使うほど孤独が深まる」傾向を明らかに

Image:Pingingz/Shutterstock.com

OpenAIとMITメディアラボは、AIチャットボットが孤独感に与える影響を探る2つの研究結果を発表した。要約すれば、「孤独な人がチャットボットを使うことで、かえって孤独感が深まる傾向がある」という内容である。

これらの論文は、ChatGPTユーザーによる約4000万件のやり取りをもとにしている。1つ目の研究では、MITは「3か月間にわたりChatGPTの高度な音声モードを頻繁に使用した」約6000人のヘビーユーザーを対象に、うち4076人についてチャットボットとの対話がどのような感情を引き起こしたかを分析した。2つ目の研究は、981人の参加者による28日間のChatGPT使用データを対象としている。

研究の大きな発見の一つは、感情をあまり込めず気軽に利用していた人々は、使用後も孤独感が増すことはなかった一方で、元々孤独を感じていたユーザーは、さらに孤独感が深まっていたという点である。報告によれば「全体的に、すべての使用モードや会話タイプにおいて、日々の利用頻度が高いほど、孤独感、依存、問題のある使用、そして社会性の低下との相関が高まった」とされている。

使用モードの違いも影響を及ぼしていた。テキストベースよりも音声ベースのチャットボットの方が、孤独感をより強める傾向が見られた。特に「ニュートラルボイス」(無感情な音声)の場合、当初は孤独感や依存の軽減に効果的に見えたが、使用頻度が高くなるとその効果が薄れていったという。

研究はまた、この結果を相対化するために、SNSやゲーム依存に関する過去の研究とも比較している。「孤独感とSNSの利用は循環的な関係にある。人は孤独であればあるほど、他人との比較や取り残される不安を感じ、さらに孤独が強まり、SNSの利用時間が増えるという悪循環に陥る」「孤独感は、問題のあるインターネット利用の原因であり、結果でもある」とのことだ。

さらにMITの研究チーム自身、この研究はまだ初期段階にすぎず、対照群が存在しないことや、気候・季節などの外的要因を考慮していない点を限界として認めている。

研究者たちはまた、AI開発企業が孤独感を助長するリスクを軽減するために、「ガードレール(安全措置)」の設計を進める必要があると主張している。そして、AIの仕組みを理解している人ほど、AIへの依存度が低い傾向もあることから、「AIリテラシーを高めるための包括的なアプローチが重要である」とも指摘。「AIチャットボットの過剰使用は単なる技術的問題ではなく、社会的問題である。孤独を軽減し、健全な人間関係を支援するための取り組みが必要だ」と結論づけている。

こうしたチャットボットのもたらす不幸な現実は、すでに起きている。2023年、ベルギーのある男性が、GPT-4を基盤としたチャットボットと長期間「交際」した末、自死したという事件が報告されている。この男性にはうつ病の病歴があり、妻は「チャットボットが死に追いやった」と非難している

また、ChatGPTの使用が男女で異なる影響を与えているという発見も興味深い。4週間にわたる実験の結果、女性の参加者は男性よりも人との交流がやや減少していた。さらに、ChatGPTの音声モードにおいて、自分の性別と異なる声を使った参加者は、孤独感や感情的依存度が有意に高まっていたという。

AIチャットボットが孤独な人々を深く依存させるサイクルは、サービスを提供する企業にとっては収益につながり、修正すべき動機が働きにくい。だからこそ、研究チームがいう「実生活で強固な社会的支援システム」を人々が得られるよう、政策的介入が必要になるかもしれない。

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