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テスラModel Y、FSD搭載でも「道路の絵」を認識できず突っ込む

Image:Kyle Paul/YouTube

先日、YouTuberのMark Roberが行ったAutopilotで走行するテスラModel Yが、道路上に置かれた「道路の絵」を認識できるか否かを試した動画は、記事執筆時点で1768万回も再生されるほど世界の注目を浴びた。

だが、RoberのModel Yがテスラの最も高度な先進運転支援システム(ADAS)であるFSDではなく、下位のADASオプションであるAutopilotを使用していたにもかかわらず、動画のタイトルを「自動運転車を欺けるか?(Can you Fool a Self-Driving Car?)」としていたことに疑問を呈する人も多かった。

XクリエイターのKyle Paulも、やはりRoberの動画が腑に落ちなかったひとりだったため、自らFSD搭載のテスラ車と、Roberがやったのと同様の「道路の絵」が描かれた壁を用意して、新たな実験を行うことにした。Roberがこの実験のために用意したのは、FSD HW3搭載のModel Yと、AI4(HW4の新しい呼び名)搭載のCybertruckだ。

そのテストの様子は動画を見ればわかるとおりで、Cyber​​truckのほうは「道路の絵の壁」を首尾よく検出し、きちんと減速して停止することができた。Cyber​​truckが搭載していたFSDソフトウェアのバージョンは13.2.8だった。

Paulのテストは、面白半分でやったようにも見えるRoberの動画に比べて、何度も繰り返してテストを行っており、真のテスラの性能を探ろうとしている点に好感が持てる。

だが、FSD HW3搭載のModel Yでは、何度テストをしても、やはり「道路の絵の壁」を認識することはできず、衝突を避けるために手動介入による制動が必要だった。ちなみに、FSDソフトウェアのバージョンは最新の12.6より古い12.5.4.2だったが、これが動作に影響したわけではなく、カメラ映像に依存する周囲環境認識・分析方法に関する問題だと考えるのが妥当なところに思える。

なお、テスラのFSD HW3とAI4(HW4)の性能には少なからず差がある。まずその物理的なサイズからしてAI4のほうが大きく、HW3からAI4へのアップグレードはできない。さらにAI4が採用しているカメラはHW3よりも高い解像度を持っており、最新のFSDソフトウェアバージョン13では、旧ハードウェアに合わせて制限していたカメラ性能をフルに活用できるようになっている。

このあたりの違いが、AI4搭載のCybertruckで上手く機能したと考えられる。将来、HW3にもバージョン13のソフトウェアが配布されれば、また同じ実験をして、その動作に変化があるかを確かめてみるべきかもしれない。

道路上に道路の絵が書いた壁が置かれていることなど、通常ならまずあり得ない。だが、「自動運転」をうたう機能を搭載する自動車であれば、そんなトリックにも騙されず、適切に障害物を認識して停止できる能力を備えることが求められる。とりあえずは、LiDARを搭載するクルマなら停止できることはRoberによって確認された。もしテスラ車をこれから買うというのなら、HW4(AI4)およびソフトウェアバージョン13以降を搭載するものを選べば、あり得ない障害物が路上にあったときにも長生きができそうだ。

念のため記しておくと、テスラが搭載するFSDやAutopilotはいずれも、機能的な分類上、自動運転と呼べるものではない。そのため使用中もドライバーは常に周囲状況を把握し、いつでも車の制御を維持できるようにしなければならない。

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