ミリ波に対応していないのに立派な結果

iPhone 16e搭載のC1モデム性能、iPhone 16のクアルコム製を上回る。多くの米キャリアで

Image:Apple

iPhone 16eには、アップルが初めて独自に設計した「C1」モデムが搭載されている。これまで長年採用されてきたクアルコム製モデムと比較して性能が劣るのではないかという疑問が投げかけられていた。実際、正式発表前には5Gのダウンロード速度がクアルコム製よりも遅いとするリーク情報もあった

しかし、実際にスピードテストを実施したところ、iPhone 16eは多くの環境において、クアルコム製チップを搭載するiPhone 16と同等、あるいはそれ以上の通信性能を発揮していることが明らかとなった。

インターネット通信速度の計測サービス「Speedtest.net」を運営するOoklaは、AT&T、Verizon、T-Mobileといった米国主要キャリアのネットワークを対象にベンチマークを行い、その結果を公表している。それによると、iPhone 16eはVerizonとAT&Tにおいて、iPhone 16よりも中央値のダウンロード速度が速いことが判明した。ただし、T-Mobileのネットワークに限ってはiPhone 16の方がやや高速であった。

全キャリアを通じた最高速度の比較では、iPhone 16eがミリ波(mmWave)に対応していないため、ミリ波対応のiPhone 16の方が有利となった。ただし、ミリ波は主に都市部でしか利用されておらず、しかもミリ波対応のiPhone 16は米国モデルに限られる。一方、iPhone 16eはサブ6GHz帯に限定されるが、現実的な使用環境を踏まえると大きな不利とは言い難い。

Image:Ookla

T-Mobileのユーザーに関しては、iPhone 16eのダウンロード速度の中央値が264.71Mbpsであるのに対し、iPhone 16は357.47Mbpsと、約24%の差がついた。Ooklaは、この差がT-Mobileが展開している5Gスタンドアロンネットワークやキャリアアグリゲーションといった高度な技術によって、クアルコム製モデムがより高い性能を発揮した結果ではないかと分析している。

Image:Ookla

Verizonでは両機種とも通信速度が比較的遅めで、iPhone 16eが140.77Mbps、iPhone 16が124.4Mbpsだった。一方、AT&TではiPhone 16eが226.9Mbps、iPhone 16が146.49Mbpsという結果が出ており、ここでもC1モデムの優位が確認できる。

アップロード速度においては、すべてのキャリアにおいてiPhone 16eがiPhone 16を上回っていた。特にVerizonとAT&Tにおける差は顕著である一方、T-Mobileにおいてはダウンロードとアップロードの両方で最も高速な結果が記録されている。

ただし、今回の結果は米国のネットワークに限定されたものであり、日本を含む他国では異なる結果となる可能性がある。それでも、日本版のiPhoneはそもそもミリ波に対応していないため、iPhone 16eの優位性が相対的に高まる可能性も考えられる。

アップルがC1モデムを発表する際に最も強調したのが、その電力効率の高さである。実際、iPhone 16eは「iPhone史上もっとも電力効率に優れたモデム」を搭載しているとされ、バッテリー寿命もiPhone 16より長くなっている。

C1モデムは、アップルがクアルコムへの依存を断ち切るための第一歩とみられている。すでに第2世代の「C2」モデムを開発中で、次はミリ波に対応すると噂されており、将来的に完全自社製モデムへの移行が現実味を帯びてきている。

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