車の特性をよく知っておくのが大事
Autopilotで走るテスラ、進路上に置かれた「道路の絵」を認識できず突っ込む

GoogleのWaymoなど、各社が開発する自動運転システムは、多くがLiDARや超音波レーダー、カメラなどにAIを組み合わせて周囲の障害物を認識するようになっている。
一方、テスラのAutopilotは、同社のイーロン・マスクCEOが「人は2つの目だけで運転できるのだから、車も2つのカメラのみで自動運転が可能になるべきだ」と主張し、視覚とニューラルネットのシステムが人間の運転手のように動作するように設計するというポリシーの上に開発されているため、LiDARを使用しない。さらに2021年にリリースされたAutopilotハードウェア3以降では、レーダーも取り除かれている(2023年に提供を開始したModel SとModel X用のハードウェア4ではレーダーを再び搭載した)。
そのせいかはわからないが、テスラのAutopilotはいまだにドライバーが常に周囲に注意を払い、いつでも運転を取って代われるように供える必要がある「自動運転レベル2」、要するに先進運転支援システム(ADAS)の域を出ておらず、マスク氏が期待した成果を上げているとは言い難い。
技術系YouTuberのMark Roberはこの問題に注目し、最近の動画投稿で興味深いデモンストレーションを行った。それはテスラModel Yと、LiDARを使用したシステムを搭載する他の自動車をさまざまな条件下でテストし、Autopilotの安全性を相対的に比較しようという内容だ。

比較したのは、進路上に子どものマネキンを立たせてそれを認識できるか、進路上に子どものマネキンが飛び出してきたときにそれを認識できるか、濃霧の中できちんと必要な情報を得ながら走行できるか、大雨のなかで必要な情報を得ながら走行できるか、スポットライトの光を正面から受ける状態で必要な情報を得ながら走行できるか、進路上の正面に、道路の絵が描かれた壁を設置した場合、それを認識して適切に停止できるかの6項目だ。
(なお、この動画はYouTubeが最近搭載した自動吹き替え機能に対応しているため、環境によっては不自然な日本語音声で再生される)
結果は、LiDAR搭載の他社のADASがすべての項目で安全に走行または停止できたのに対し、テスラのAutopilotは、濃霧、大雨、そして前方に道路の書かれた絵が置かれた状況の3項目で、不合格となった。
公平のために指摘しておけば、濃霧はともかく、大雨のシチュエーションはかなりの雨量を再現したもので、人間でも運転が困難なほどだった。また、進路上に道路の絵が描かれた壁が立ちはだかっているというシチュエーションは普通はあり得ないものであり、きっと人間でも、集中していなければ衝突してしまうドライバーはいそうなものだった。
とはいえ、事故は往々にしてドライバーが障害物を認識・認知できなかったときに発生する。前方に壁があれば単にそれを壁と認識するLiDARと、そこに描かれた絵によって騙される可能性のあるコンピュータービジョンとでは、潜在的な障害物の認識能力に差が生まれるのは当然と言えば当然だ。
「人間はミスをする生き物」なのだから、人間と同じように動作する設計では、人間と同じようにミスが発生するのは当たり前と言えるかもしれない。
安全第一の観点からすれば、人間よりも大きく、重く、急停止や急な方向転換ができず、それでいて高速で走行する自動車には、人間よりもさらに高度な周囲認識能力を備えるべきだ。
電動モビリティおよびグリーン・エネルギーに関するニュースサイトのElectrekは、現在販売されているAutopilotやFSDのしくみでは、イーロン・マスク氏が主張するようなレベル5の自動運転が実現できないのは明らかだと述べている。
- Source: Mark Rober(YouTube)
- via: Electrek