ゲームプラットフォームやパブリッシャー企業は歓迎?
トランプ政権の関税強化、ゲームショップや物理メディアの終焉を加速か

ドナルド・トランプ大統領がホワイトハウスに戻ってから、衝撃的な政策が矢継ぎ早に打ち出されている。その1つである関税の強化がゲームショップやゲームの物理メディアの消滅につながるものの、ゲームパブリッシャーにとって歓迎すべきことだとアナリストが述べている。
第一次トランプ政権のもとでも中国への追加関税が検討されたため、ゲームハードウェア企業のマイクロソフトや任天堂、ソニーは関税の適用除外を求める公開書簡を送付した。当時は避けることに成功したが、今なおゲームハードの部品や製造を中国に依存している状況は変わらず、新たな関税強化が値上げにつながる可能性がある。
さらに市場調査会社CircanaのアナリストMat Piscatella氏は、今回の関税がすでに低迷しているゲームの小売市場に終止符を打つ可能性があると指摘している。
そこでテックメディアWccftechは、デジタルコンテンツに特化した分析会社MIDiA ResearchのアナリストRhys Elliott氏にコメントを依頼した。そこでは、ゲームハード企業や消費者、それにゲーム小売店がどのような影響を受けるかが概説されている。
まず一部のゲームハード企業は、関税の影響を受けない市場に製造拠点を移す可能性が高いものの、これは利益率の低下を吸収できるだけの大手企業に限られるという。中小企業やハードウェアのみに依存する一部の大企業には、こうした対応はできない。ソニー(PS5)やValve(Steam Deck)のようにソフトウェア販売で利益を回収できる企業は、関税によるコスト増を自腹で負担するかもしれないとのこと。
興味深いのは、米国で販売されているゲームディスクの多くはメキシコで製造されているため、関税がかけられる可能性があるとの指摘だ。上記のPiscatella氏も、一部のパブリッシャーが最終的にゲームの物理メディアを作らなくなっても驚きではないと述べている。
だが、これは「避けられない流れを早めるだけだ」とElliott氏はいう。ゲーム専用機のパブリッシャーとプラットフォームホルダー(ハードウェア企業)ともに、いずれにせよ「物理版の終焉を望んでいる」とのことだ。
実際、ゲーム専用機の市場はデジタル化(ダウンロード販売)に向け急速に動き出している。「ゲーム遊び放題のサブスクリプション、基本プレイ無料ゲームの増加、プラットフォームホルダーが特典を通じてデジタル版を推奨するといった戦略」により加速しているというのだ。
その一方で、物理メディアは消費者にとって中古品やレンタル市場などの選択肢を与えるが、プラットフォームホルダーやパブリッシャーがそこから利益を得ることはない。中古ソフトはPlayStationやXboxストアで販売されてるダウンロード版より安いことも多く、むしろ邪魔な存在だろう。
Elliott氏は「物理的なゲームの終焉は、最終的には選択肢を狭めることになり、消費者にとっては悪いことだが、パブリッシャーにとっては良いことだ」とElliott氏はいう。
ゲーム市場で10本中9本はダウンロード販売となり、物理メディアが急速にニッチな市場になりつつあることは、すでに3年前からデータに表れていた。海外のゲームマニアが日本の中古ゲームショップで爆買いしていることが話題になりやすいが、そうした流れを反映しているのかもしれない。
- Source: Wccftech