M3搭載の新「iPad Air」は“買い”。Proや無印よりもバランスが良い“高コスパ端末”

筆者はいま、アップルが3月12日に発売するM3搭載iPad Airの実機を試している。フラグシップのM2搭載iPad Proとの違いにも注目すると、最新のiPad Airがコストパフォーマンスのよいタブレットであることが見えてきた。
Apple M3搭載で中味は大きく変わった
iPad AirはiPadシリーズのハイエンドモデルだ。現在はスタート価格がWi-Fiモデルの98,800円(税込)なので、必ずしも “お手頃” とは言えない。だが、iPad Airは優秀なオールラウンダーであり、Apple Pencil ProやMagic Keyboardなどの対応アクセサリーを組み合わせると、ビジネスからクリエーションまで幅広く使える。
筆者がいまタブレットの初心者に「おすすめのiPadはどれか」と聞かれたら、購入予算的には少し背伸びをしてでも「Airを手に入れるべき」だと答える。

今回のM3搭載モデルは、アップルが2024年5月に発売したM2搭載iPad Airと入れ替わるかたちで発売される。昨年に約2年ぶりのモデルチェンジとなった際、13インチの大きなiPad Airが追加されたり、Apple Pencil Proが新製品として発表されたりして、話題が盛りだくさんだった。その時に比べるとM3搭載iPad Airのアップデートは粛々と行われる印象もある。
筆者が試したのはパープルのWi-Fi+セルラーモデル。デザインはM2搭載モデルとまったく変わっておらず、カラーバリエーションも4色展開のまま。だが、Apple M3チップを搭載する初のiPadが「M2搭載モデルと同価格」で登場することは、誰にとっても嬉しいニュースだ。

M3チップはiPad Airに最適化して搭載されている。筆者がメインマシンとしている14インチのM3搭載MacBook Proのほか、M3搭載MacBook Air、4ポートのiMacよりもGPUのコア数がひとつ少ない9コア仕様だ。ビデオコンテンツのエンコード/デコード処理を担うハードウェアコーデックであるメディアエンジンはM2搭載モデルから強化された。
また、8KのHEVCやProRes、ProRes RAWなどプログレードのフォーマットが広く扱えるようになっていたり、高圧縮のAV1コーデックにも対応していたりする。筆者は今回試せていないが、iPad版Final Cut Proアプリによるビデオ編集も、新しいiPad Airなら効率よくこなせるだろう。
Apple Pencil ProとMagic Keyboardで最強装備に
Apple Pencilは、昨年発売されたProに加えて、USB-C接続のApple Pencilに対応する。iPad側面の磁気コネクタに装着すればペアリングとチャージができる。
筆記入力時には触覚フィードバックを確かめながら着実にツールの切り替え操作などができることもあり、筆者は買うならApple Pencil Proの一択しかないと思っている。

iPad Air専用のMagic Keyboardも新しくなった。11インチの方が3,000円、13インチの方は1万円も価格が安くなっている。M2搭載iPad Air、ならびに第5・第4世代のiPad Airでも使える互換性を確保した点は見逃せない。

シザー構造のキーボードはストロークが1mm。iPad Airの画面角度を変えてしっかりと固定できるフローティングカンチレバースタンドや、パススルー充電に対応するUSB-Cコネクタを継承する。キーのバックライトは省かれたが、その代わりに14のファンクションキーが追加された。

パームレストの素材はポリウレタンで、トラックパッドは少し大きくなった。長時間のタイピングも疲れないので、快適に使用できる。ちなみに、筆者はこのレポート原稿を新しいiPad Airでほぼ書いた。
4月にApple Intelligenceの日本語対応が完了した後は、iPad Airがドキュメント作成にも、さらに活躍してくれそうな手応えを感じた。iPad Airで書いたテキストを「作文ツール」で校正したり、レポートにApple Pencil Proで書いてApple Intelligenceの「画像マジックワンド」で清書したイラストを添えたりできるようになるだろう。
余談だが、Apple Intelligenceに含まれる生成AIツールの多くがクラウドで処理を行っている。そのためiPad Airを購入する際には、インターネットに常時接続ができるセルラー+Wi-Fiモデルを選ぶのが正解だと思う。
また、iPad AirはM2搭載モデルから物理SIMカードが使えなくなり、eSIMオンリーになった。いま筆者は物理SIMカードも使っているが、選んだ通信事業者が物理SIMからeSIMへのプラン変更を受け付けていない。新しいeSIM対応プランを申し込まなければならない。これからセルラー+Wi-FiモデルのiPadを買う方は、A16搭載iPad、A17 Pro搭載iPad miniも同じeSIMオンリーなので注意したい。

Proや無印よりもバランスのよい「Airが買い」
フラグシップのM4搭載iPad Proも魅力的だが、価格は11インチのWi-Fiモデルが168,800円(税込)からと、M3搭載iPad Airに比べると7万円も高価だ。「できること」やNano-textureディスプレイガラスなど選べるカスタムオプションはiPad Proの方が豊富に揃っているが、「ふつうの用途に不自由なく使えるiPad」が欲しい方にはiPad Airが相応しいと思う。
学校教育のデジタル教材として、あるいは商業施設でレジやサイネージなどにも使われる “無印” iPadよりも、iPad Airはビジネス・クリエーション向きにスムーズな使い勝手が得られる。
そして、8.3インチのiPad miniよりもビデオや電子書籍のコンテンツは視認性が高い。純正のMagic Keyboardが、エンターテインメントコンテンツの視聴時にはフレキシブルなスタンドとして使えることもiPad miniに対するアドバンテージだ。

11インチのiPad AirにMagic Keyboardを装着したサイズを測ったところ、本体の厚みは約1.5cm、質量は約1080gだった。13インチのM1搭載MacBook Air(最厚部1.61cm、質量1.29kg)よりも若干コンパクトなサイズ感になる。
セルラー通信機能にApple Pencil Pro、Magic Keyboardを足すと総額は193,400円(税込)になるが、常時5G接続やペンシル入力ができるモバイルデバイスであることを考えれば、MacBook Airよりも魅力的と捉えることができる。最先端のモバイルワークステーションとしてiPad Airの購入を真剣に検討する時が来たようだ。