前回とほぼ同じ結果

SpaceX、Starship飛行テストを2連続で失敗。空中で制御不能に

Image:SpaceX

3月6日、SpaceXは大型ロケット兼宇宙船Starshipの試験飛行を実施したが、その上段部分は宇宙空間に到達後姿勢の制御を失いカリブ海上空に落下した。これでStarshipは2度連続での飛行試験失敗となった。

テキサス州にあるSpaceXのStarship打ち上げ施設で行われた試験飛行は、カウントダウンが開始されT-40秒の時点で短時間の一時停止があったものの、その後は順調に進行し、ブースター部分の分離も問題なく行われ、ロケット上段部分は宇宙空間にまで到達した。

ところが、打ち上げから8分後、Starship上段が6基備えるRaptorエンジンのうちの4基が相次いで停止し、機体が回転し始めた様子が中継映像でも見て取れた。そして数分後、フロリダ州南部からドミニカ共和国に至る広範囲で、上空から多数のロケットの破片と見られる火の玉が落下するのを目撃したとの報告がSNSなどに寄せられた。

Starshipは前回、2025年1月16日に実施した飛行試験でも、打ち上げから8分半後に制御不能に陥ってカリブ海に破片を落下させている。

2月24日、SpaceXはこの打上げでは機体が「試験時の経験より数倍も強い高調波反応」を受けたせいで、推進剤の配管ラインに高い負荷がかかり、漏れ出た燃料が火災を発生すると共にRaptorエンジンが1基を残して停止したと発表した。

その後、SpaceXは問題の再発防止のための設計変更を加えたとし、火災発生部分に通気口と窒素ガス噴射による消火システムを備えたとしていた。

今回の打ち上げは、当初予定していた3月3日の予定を一度延期している。その理由は、Starshipの上段部分に技術的問題が発見されたからだとされた。イーロン・マスクCEOは、エンジン始動システムの圧力低下などの問題が見られたため、上下段とも再点検を施し、数日後に再度飛行試験に臨むのが最善だと述べていた。

打ち上げ直前、SpaceXは「Starshipの上段に大規模なアップグレードを施した。Flight8(今回の試験飛行)では、Starshipの現実的な限界を見つけ、最終的にStarshipを発射場に戻し、それをキャッチする準備を整えることに注力してきた」と述べていた。

打ち上げ失敗の後、SpaceXはXへの投稿で「予定外の急速な分解が発生し、その後連絡が途絶えた」と報告し「いつものように、成功は私たちが学んだことから生まれるものだ。今日の飛行は、Starshipの信頼性を高めるためのさらなる教訓を提供するだろう」と述べた。

だが結果だけを見れば、今回の打ち上げは前回とまったく同じような経過をたどった。前回の失敗で学んだことや発見した問題は、しっかりと消化されていなかったようだ。

なお、Stashipの制御が失われた後、米連邦航空局(FAA)は、フロリダ州と周辺のいくつかの空港に一定時間の飛行停止命令を出し、飛行中の旅客機は空港に足止めされ、すでに離陸した便は空港へ逆戻りすることを余儀なくされた。

今回のStarshipの飛行試験は、より大型のStarlink通信衛星を展開するという目的のため、4基のダミー衛星を搭載していたが、今回の失敗により計画は遅れることになりそうだ。また、米国が主導する月~火星探査プログラムであるアルテミス計画でも、Starshipは重要な役割を担う予定であり、同プログラムの最初の有人月面着陸が早ければ2027年にも実施する計画となっている。

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