実機で確かめたい “3つのいいところ”

「iPhone 16e」速報レビュー。「iPhone SE」との違いをチェック、買い替えるべき?

iPhone 16ファミリーに新しく加わる「iPhone 16e」をレポートする

アップルがiPhone 16ファミリーに「iPhone 16e」を追加する。最先端のA18チップを搭載する新しいベーシックモデルだ。

2025年は年明けとともに、方々から「iPhone SEの後継機」を期待する声が上がっていた。だが新しいiPhoneは、SEの名前を冠することなく、iPhone 16ファミリーの中で最も手頃な価格のベーシックモデルとしてラインナップに加わった(Apple Storeでの販売価格は税込99,800円から)。

名前の「e」の意味をアップルは説明していないが、筆者は実機に触れてiPhone 16eが様々な可能性に満ちたiPhoneであると感じた。「e」の1文字には、さしずめ「extended」(拡張された)、あるいは「evolving」(進化を続ける)という意味が込められているのだと思う。

本記事では、発売前に実機を試したファーストインプレッションを報告していきたい。先に感想を述べると、本機は完成度が高く、多くのユーザーが必要とする機能を十分に揃えていることがわかった。

HDR表示にも対応する6.1インチのディスプレイ

今回はiPhone 16eのファーストインプレッションとして「3つの特長」にフォーカスしたい。ひとつは6.1インチのSuper Retina XDRディスプレイだ。

有機ELを採用するオールスクリーンデザインを採用。ピーク輝度1200nits(iPhone 16は1600nits)のHDR表示対応、200万対1のコントラスト比など、上位のiPhone 16に迫る実力を備えている。

筆者の家族が長年使ってきた第2世代のiPhone SEに比べると、ディスプレイの視認性の高さは明らかだ。Touch IDを搭載するホームボタンは廃止されたが、その一方で映像表現力の豊かさが圧倒的に変わることをポジティブに捉えたい。

精細感の高い6.1インチのSuper Retina XDRディスプレイ

Face IDを搭載するTrueDepthカメラなどが配置されているフロント・トップのエリアは、iPhone 14と同じくノッチデザインとしている。iPhone 16 Proを使っている筆者は、Dynamic Islandからアプリが表示する情報へ素速くアクセスできる「機能」の面では少し不便さを感じるが、同じ「切り欠き」であることを踏まえれば映像表示の面では変わらないように思う。

ただ、iPhone 16eはディスプレイ周囲のベゼルが太く、コンテンツの表示エリアが若干だが窮屈になる。そしてiPhone 16 Proモデルが搭載する最大120Hz駆動のProMotionテクノロジーがないため、ウェブブラウザを素速くスクロールした時などは、表示が少しカクつく感じがあるかもしれない

右側がiPhone 16 Pro。そもそも画面サイズが異なっているが、iPhone 16eはベゼルの太さがあるため表示が少し窮屈に感じられる

Super Retina XDRディスプレイにより、iPhone 16eで撮影したドルビービジョンによる4K/HDRビデオは、活き活きとした画質で表示できる。カバーガラスはアップル独自のセラミック・シールドを採用しているのでキズにも強い。

iPhone SEからiPhone 16eに買い換えれば、少なくともビデオやゲームなどのエンターテインメントにおいて、すぐに快適さが実感でき満足感が押し寄せてくるはずだ。

カメラはベーシックモデルに必要な機能が満載

2点めに注目するのはカメラ。背面のカメラは、シングルレンズユニットの48MP Fusionカメラだ。ざっくりと言えば、ユニット単体の性能とできることはiPhone 16の広角カメラに近い。

シングルレンズの2イン1カメラシステムを搭載。等倍・2倍ズーム撮影に対応する

iPhone 16eの「2イン1カメラシステム」は、レンズが1つながらも、等倍と光学2倍相当の望遠撮影に対応できる。2倍ズーム撮影時には48MPセンサーの中央部分を切りだして、さらにコンピュテーショナルフォトグラフィの処理を加えて被写体に寄った写真や動画を記録してくれる。

料理や植物などの被写体にカメラを近づけながら、自分の影が写り込まないように撮りたい時などに2倍ズームが重宝する。カメラアプリの設定に入ると、iPhone 16eの48MPセンサーの実力をフルに発揮させる「HIEF最大」モードが選べるオプションも用意されている。

マクロ撮影の機能がなくても、2倍ズームを使えば近くの被写体にある程度寄って写真やビデオが撮れる

ビデオ撮影の機能も充実。4K/60fpsのドルビービジョンによるHDR撮影や、記録した音声を後処理加工でズームインしたり立体的なリスニング感を加えたりできるオーディオミックスの機能も揃っている。

静止画機能についても、iPhone SE世代から大きくステップアップしている。筆者は、うす暗い場所でも明るく色鮮やかな写真が撮れるナイトモードがあることと、写真に記録された不要な被写体を後処理加工で簡単に消せるApple Intelligenceの「クリーンアップ」が使えることなどがiPhone SEから買い換える動機になると思う。

うす暗い場所でも明るく色鮮やかな写真が撮れる

後者のクリーンアップについては、Apple Intelligenceに対応していないiPhone 11、iPhone 12世代のユーザーにも比較のポイントとして注目してほしい。米国英語から先に対応していたApple Intelligenceは、いよいよ4月にiOS 18.4の正式公開後から日本語でも使えるようになる。

Apple Intelligenceの楽しさについてはまた機会をあらためて掘り下げようと思うが、iPhone 16eのカメラを向けた被写体の「モノ」が何かについてGoogle検索したりChatGPTに聞いたり、または外国語の「テキスト」を翻訳したり、色々便利な使い方ができる生成AIツール「ビジュアルインテリジェンス」が秀逸だ。

iPhone 16eはこれらApple Intelligenceの機能を、本体側面のアクションボタンから起動できる。最新A18チップを搭載するiPhone 16eはとにかく動作が機敏なので、アクションボタンに割り当てた機能がボタンとクリックすると「バッ!」と勢いよく起動する。Face IDのロック解除も速い。カメラも含む「操作感の心地よさ」も、筆者がiPhone 16eについて注目する “2.5点めのポイント” とした。

カメラを向けた被写体について画像情報を元に詳細を調べるApple Intelligenceのビジュアルインテリジェンス機能が便利で楽しい

なお、iPhone 16eのカメラについてひとこと補足しておきたい。もしこれからiPhone 16eの購入を本格吟味するのであれば、ほかの上位のiPhone 16ファミリーに比べて「ない機能」も確認してほしい。

たとえばカメラで言うと、筆者はビデオと写真のマクロ撮影をよく使うので、これがiPhone 16eに「ない」ことが残念だ。シングルレンズユニットのため、本機は空間写真と空間ビデオの撮影もできない。Apple Vision Proや他社のXR/MRヘッドセットを所有している方は、iPhone 16以上のモデルを買う方が日常のシーンを空間撮影できる楽しみが得られる。

さらにもう一段上のクリエイティブな撮影を楽しみたい方は、iPhone 16 Proの方が様々な期待に応えてくれるだろう。iPhone 16 Proであれば、RAW写真の記録、Logビデオ撮影の対応に加えて、USB-Cコネクタに接続した外付けストレージへのダイレクト記録もできる。

軽さとタフネスの安心感

そして最後の3点めは「軽さ」だ。iPhone 13ファミリー以前のモデルを使っていた方は、iPhone 16eを手にした時、すぐハンドリングの軽快感に気がつくと思う。

アップルはiPhone 14を開発した際、内部機構を大きく変えて修理のしやすさを高めたほか、軽量化にも踏み込んだ。以来、6.1インチのiPhoneは少しずつ軽くなり、iPhone 16eはiPhone 16よりも3g軽い167gになった。

左は4.7インチの第2世代iPhone SE。iPhone 16eの方が画面は格段に見やすくなる

側面は質感の高いアルミフレーム、背面には強靱なガラスパネルを採用する。アップル純正のシリコンケースを装着しても質量は196gだった。

4.7インチのiPhone SEは軽くて良かったのに、iPhone 16eは大きくなってしまって残念…と思っている方は、ぜひiPhone 16eの実機に速く触れてみることをおすすめする。軽さをキープしつつ、画面が大きくなってカメラがリッチになるiPhone 16eに食指が動くはずだ。

純正シリコンケースを装着しても質量は196グラム。軽快にハンドリングできるiPhoneだ

iPhone 16eにはアップルが独自に設計するSoCの「Apple A18」チップと、本機が初めて搭載する5G対応のセルラーモデム「Apple C1」が新たに搭載される。アップルは両チップによる貢献が、iPhone 16eのデバイスとしての電力効率を高め、6.1インチのiPhoneの中で最も高い電力効率を引き出したと説明している。

バッテリー持ちは公式スペックによると、本体にキャッシュしたビデオで最大26時間、ビデオストリーミングは最大21時間だという。これは同じ6.1インチのiPhone 16よりもタフな数字だ。

当たり前だが、筆者はおろしたての新しいiPhone 16eで取材をしているので、経年変化を踏まえたiPhone 16eのバッテリー持ちはコメントできない。参考までに短期間ではあるが試したところ、連日iPhoneをフルに充電した状態から24時間使い倒すと、バッテリーの残量は25%から30%前後になっていた。バッテリー持ちは悪くないと感じる。

C1チップの効果は通信の安定性向上にも貢献するようだが、こちらはiPhone 16eの発売後にユーザーから寄せられるフィードバックにも注目したい。

写真やビデオのファイルは定期的に外付けストレージにバックアップすればiPhone 16eの内蔵ストレージの空き容量が確保できる。SUNEASTの高速外付けSSD「Revolve R10」の512GBモデルは、価格はオープンだが実売価格は約1万円。iPhone 16eに保存した約2.88GBのビデオと写真のデータが約3分で転送できた

iPhone 16eはUSB-Cコネクタを採用しているので、外付けストレージメディアにiPhone 16eで撮影した写真やビデオを定期的にバックアップすれば、内蔵ストレージの容量は128GBのモデルでも十分に楽しめると思う。少しでも本体の購入価格を安く抑えたい方には128GBのモデルがおすすめだ。

繰り返しになるが、4月からApple Intelligenceが日本語に対応する。その頃にアップルがまた新しいiPhoneを発表していなければ、「Apple Intelligenceに対応する10万円以下のiPhone」として、iPhone 16eの評価はまた一段と高まりそうだ。

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