【連載】佐野正弘のITインサイト 第148回
高すぎる「iPhone 16e」で注目される「安い中古iPhone」。買うときに注意すべきポイント
円安で著しい値上げが進んだ、米アップルの「iPhone」シリーズ。度重なる政府のスマートフォン値引き規制強化もあって、iPhoneが非常に買いづらくなっていることは間違いない。そこで長らく期待されていたのが、iPhoneの低価格モデル「iPhone SE」シリーズの後継機種の登場だった。
約10万円の“SEシリーズ”後継機「iPhone 16e」。懸念となるiPhone価格の高騰
そして米国時間の2月19日に、待望のiPhone SEシリーズの後継とみられる新機種「iPhone 16e」が発表。最新モデルと同じ「iPhone 16」の名前を冠している通り、チップセットに「A18」を搭載しApple Intelligenceに対応する一方で、カメラを1眼に減らし、モバイル通信に必要なモデムを他社から調達せず、自社開発の「C1」を採用するなど、性能を抑えて低コスト化が図られている。
だがその販売価格は、日本においてはストレージ128GBモデルで9万9,800円と、10万円に迫る水準にまで高騰。iPhone 16eの発表直前まで販売されていたiPhone SE(第3世代)は64GBモデルで6万2,800円から、128GBモデルでも6万9,800円だっただけに、iPhone SEと比べ3万円以上値段が上がってしまったことになる。

それゆえiPhone 16eの発表直後から、SNSなどでは失望の声が溢れていたようだが、これは円安が解消しない限り、日本でアップルから低価格で購入できるiPhoneの新機種はもう出ないということも示している。とはいえ日本では、多くの人が政府の値引き規制以前に「実質1円」など携帯各社の値引き施策で安くiPhoneを購入しており、アップル独自のエコシステムに取り込まれている。
それゆえ高騰が進んでもなお、iPhoneが圧倒的ナンバーワンのシェアを獲得しているのが実情だ。「iPhoneが高いから」といって、Androidを搭載した他社のスマートフォンに容易に乗り換えにくいことも、また確かであろう。
それだけに今後、安くiPhoneを購入するため新品を諦め、中古のiPhoneを選ぶ人も増えると思われるのだが、実は中古スマートフォンの購入は国、ひいては総務省が推奨しているものでもある。
実際2023年に総務省が公表した「日々の生活をより豊かにするためのモバイル市場競争促進プラン」では、「近年、端末価格が高騰傾向であり、中古端末の需要は増加」していることから、「国民が低廉で多様な端末を選択できるようにするため、中古端末の更なる流通促進が重要」としている。スマートフォンの値引きは厳しく規制する一方で、中古スマートフォンの流通を増やすことには非常に力を注いでおり、安く購入するなら新品よりも中古品を積極的に選んで欲しいというのが現在の日本政府の方針なのである。

そこで総務省は、中古スマートフォンの業界団体であるリユースモバイル・ジャパンの取り組みをサポートし、一定の審査基準をクリアした中古事業者を認定する「リユースモバイル事業者認証」という制度を設け、消費者がより安心して中古スマートフォンを購入できる環境の整備を進めている。そうした取り組みもあって中古スマートフォンの販売自体は伸びているのだが、一方で中古スマートフォンを購入する上ではさまざまな “眼力” が求められるという課題もある。
中古スマートフォンの購入における注意点とは
確かに外装の傷や汚れなどは見た目で判断できるが、スマートフォンを利用する上で重要なバッテリーの消耗具合いなどは判断がしづらい。また携帯電話特有の問題として、中古市場に流れたスマートフォンが不正に入手されたものであったり、分割払い途中のものでその支払いが滞ったりすることによって、特定の携帯電話会社のネットワークが利用できなくなる「赤ロム化」という事象も存在したりする。

そうした中古スマートフォン特有の問題解消については、総務省の有識者会議などでも議論が進められている最中で、すぐ解消するものではない。中古ショップであれば赤ロム化に対して何らかの保証を付ける場合もあるが、フリマアプリなどで個人が売買しているスマートフォンにはそうした保証もないので、購入時の眼力が一層問われることになるだろう。

ただひと口に中古品といっても、事業者や販路によって内容にかなりの違いがあり、中には新品に近い中古品というものも存在している。それが「整備済み製品」と呼ばれるものだ。
これは初期不良品や状態のいい中古品、あるいは店舗への展示や開封がなされたが使われなかった品などを、修理・クリーニングするなどして再生し、メーカーや販売会社が一定期間の保証を付けて販売するもの。中古品ながら新品に近い扱いがなされることもあって一般的な中古品より値段が高いことが多いが、動作保証がなされているだけに安心感は高い。
その代表例となるのがアップルの「認定整備済製品」であり、クリーニングや点検に加えアップル純正部品によるパーツ交換が実施されるほか、1年間の保証が付き、なおかつ「AppleCare+」への加入も可能だ。日本では長らくiPhoneの扱いがなかったのだが、2023年からはiPhoneの認定整備済製品も販売されるようになっている。

他にも整備済み製品を扱う事業者はいくつかあり、代表的なところでいえば携帯各社が販売する認定中古品が挙げられる。こちらは状態の良い中古品に対してバッテリーや動作のチェックをし、クリーニングをして30日の保証を付けたものとなり、外装の状態によって価格は異なる場合があるが、携帯各社が提供する補償サービスにも加入できることから安心感は高い。
一例として大手3社がオンラインショップで認定中古品として扱っている「iPhone 13」の128GBモデルの価格を確認すると、おおむね7万円前後で購入できるようだ。NTTドコモの場合、さらに外装の状態を3段階から選ぶことができ、最も上の「A+」では7万2,600円、最も下の「B」では6万1,600円と、およそ1万円の差があるようだ。

他にも整備済み品は、Amazon.co.jpが「Amazon整備済み品」として販売に力を入れているし、整備済み製品のマーケットプレイスを運営するフランスのBack Marketという企業も日本での事業強化を図っており、伊藤忠グループで中古スマートフォン関連の事業を手がけるBelongとの協業でスマートフォンの買取強化などを進めている。

このように、中古のiPhoneを購入する手段は新品より多く、それだけに購入する側に知識が求められることは覚えておくべきだ。値段だけで判断すると後悔することもあるだけに、販売されている品、そして販売する事業者の質もよくチェックした上で購入することをお勧めしたい。