ファンの間では賛否
米Amazon、映画『007』シリーズの制作権を獲得。衝突伝えられていた権利保有者とIP管理のための会社設立

2021年にダニエル・クレイグがシリーズを降板してから、なかなか次回作となる第26作目のニュースも聞かれない人気スパイ映画シリーズ『007』だが、その制作権を米Amazon MGM Studiosが獲得したことが、2月20日に発表された。
『007』こと『ジェームズ・ボンド』シリーズの権利保有者で、映画制作会社イオン・プロダクションを率いるバーバラ・ブロッコリ氏およびマイケル・G・ウィルソン氏は、米Amazon MGM Studiosと映画作品の知的財産権を管理する新たな合弁会社を設立したAmazonは今後の同シリーズのクリエイティブ・コントロールを獲得し、ウィルソン氏とブロッコリ氏は今後も約60年にわたる同シリーズの資産の共同所有者として留まるものの、ウィルソン氏は慈善事業などに集中するため、映画製作からは身を引くことを明らかにした。
一方、米AmazonはMGMを買収して以来ボンド作品の配給権を手にしているが、今後は制作権も手にして、未来のボンド像を作り上げていくことになる。Amazonプライム・ビデオとAmazon MGM Studios責任者、マイク・ホプキンス氏は木曜日の声明で「われわれは、ジェームズ・ボンドを世界中の映画館に届けてくれた故アルバート・R・ブロッコリおよびハリー・サルツマンに、そしてマイケル・G・ウィルソンとバーバラ・ブロッコリの不屈の献身と、世界中の多くのファンに愛されているフランチャイズの遺産を継承する役割を得られたことに感謝しています。われわれは、この貴重な遺産を引き継ぐことを光栄に思っており、世界中のファンの皆さんを伝説的な007の次の時代にご案内することを楽しみにしています」と述べた。
ちなみに、今回の発表に対してファンの間では失望と不安の声が多く聞かれるようになっているとHollywood Reportersは伝えている。『007シリーズ』は安易なスピンオフや冗長なテレビシリーズへの展開を極力抑え、映画シリーズとして何十年もその人気を維持し続けてきた。
一方、Amazonは昨年、プライム・ビデオで英国スパイドラマ『シタデル』の配信を開始した。この作品には3億ドルもの予算が投じられ、世界各国でそれぞれの国に合わせた『シタデル』のスピンオフ作品を作り、さらにその各国のキャラクターが一堂に会する、英国スパイ版『アベンジャーズ』的な作品に発展させることが計画されていたという。だが、そのような企画ありきで制作された作品がストーリーに説得力を持つように機能させることは難しいとHollywood Reporterは指摘。Amazonにはほかにも、やはり数億ドルを投じて権利を取得した『ロード・オブ・ザ・リング』の前日譚シリーズがあるが、こちらもストリーミング界隈ではそこそこの人気であるようだが、一方で原作ファンや映画ファンの間では賛否が分かれているという。
また、昨年の暮れにはブロッコリ氏およびウィルソン氏とAmazon側との間に衝突が起こっていることがWall Street Journalによって報じられてもいた。その理由は、Amazon側の幹部がボンド作品を単なる「コンテンツ」と呼び、さらにはテレビ向けのスピンオフあるいは女性版ボンドシリーズを検討していることが伝えられたことなどが影響していると報じられた。また、ブロッコリ氏は以前に、ボンドを演じる俳優の人種にはこだわらないと発言し物議を醸したことはあるが、あくまでそのキャラクターは男性で、基本的に理想的な紳士であることにこだわりがあったようだ。
今回の発表によって、それらのいざこざは解決されたと考えられるが、もしそうでなかった場合すでに3年以上制作されていない『007』シリーズがどうなっていくのか、気になるところではある。
ちなみに、現時点でボンド映画の最新作にして25作目の『007 ノー・タイム・トゥ・ダイ』は、ダニエル・クレイグ主演となって5作目にして最後の作品。2021年に公開され、7億7500万ドルの収益を上げている。次回作の製作スケジュールやクレイグの次のボンドを誰が演じるのかに関する発表はまだない。
- Source: Amazon
- via: The Hollywood Reporter Variety