「埋め立て地のゴミ全部買う大作戦スペシャル」

ビットコイン7500枚入りHDD誤廃棄の男、発掘のためゴミ埋め立て地ごと買い取りを計画

Image:kaz00 / Shutterstock.com

英国のコンピューター技術者ジェームズ・ハウエルズは、ウェールズ・ニューポート市議会に対し、当時のパートナーが12年前に捨ててしまったハードディスクドライブを探すため、それが廃棄されたと思われるゴミ埋め立て地を買い取ると申し出た。

ハウエルズによると、問題のHDDには彼が2009年にマイニングした7500BTCものビットコインの秘密鍵が保存されていたのだという。2009年当時のビットコインはほとんど価値がなかったが、2025年2月現在では1BTCが7.7万ポンド(約1460万円)になっており、7500BTCだと6億ポンド、日本円で約1100億円相当にまでその価値が膨れあがっている。

2013年の夏、ハウエルズはオフィスの整理中に誤ってビットコインの秘密鍵が入ったHDDを黒い袋に入れて自宅に持ち借り、玄関に置いていた。彼の当時のパートナーは、その袋をゴミと思い込み、ゴミ捨て場に出してしまったのだという。ハウエルズはHDDが捨てられてしまったことに気づくとすぐに、それを捜索し取り戻すための協力を市に要請した。

ところが、市議会はHDDが埋め立て地に廃棄された時点で、その所有権は市議会のものになったと主張し、ハウエルズの要請に抵抗し続けてきた。

2017年にハウエルズが埋め立て地の掘り起こし許可を求めたときは、市当局は安全上の懸念と、もしもHDDが発見されたりすれば、ゴミの中に一攫千金のお宝があると思い込んだにわかトレジャーハンターが、シャベル担いで各地の埋め立て地に侵入しようとする可能性があるとして、ノーと回答した。

ハウエルズは、2021年にも、もしビットコインが復元できれば、その25%を市に寄付すると提案したが、市はノーと返答した。2022年には、Boston Dynamicsのロボット犬Spotを投入して、人が立ち入ることなくHDDを捜索すると提案した。市の回答はノーだった。ハウエルズはさらに、埋め立て地を採掘施設として運用しようということも考えたが、これは周囲が支持しなかったという。ハウエルズは、最終的に埋め立て地に立ち入る権利を求めてニューポート市を訴えた。判決はノーだった。ウェールズにある高等法院の裁判官は1月、ハウエルズにはHDDを取り戻す権利はないとする市議会の主張を支持したのだ。

なお、市がハウエルズの要請を拒否し続けるのには理由がある。まず、目的のHDDを探し出そうとしてやみくもに埋め立て地を掘り起こすようなことをすれば、生態学的に深刻な危険が発生する可能性がある。まして12年前に埋め立て地に投げ入れられたHDDを発見するには、いままでにそこに廃棄された2万5000m<sup>3</sup>の廃棄物と土砂をひっくり返さなければならない。

現実的に考えても、掘削作業を実行すればコストだけでなく、作業員の傷病リスクも考える必要がある。またHDDが発見できるできないにかかわらず、作業後には埋め立て地を密閉する作業が必要になり、それにもそこそこのコストがかかる。なにより、12年もゴミの山に埋もれていたHDDが発見できたとして、そこからデータを取り出すことが本当に可能かどうかもわからない。そして現在、ハウエルズは投資家を募り、資金的な後ろ盾をもって、埋め立て地の買い取りを申請している。

ちなみに、市はまだ申請に対する最終決定を下していないが、すでに埋め立て地の一部に太陽光発電所の建設を計画しているという。

もし、最終的にハウエルズがHDDを回収できなくても、この物語を企画化してハリウッドの映画会社やNetflix、Amazonプライム・ビデオあたりに持ち込めば、ドキュメンタリー映画やテレビシリーズ化して、いくらかの収益を得ることはできるかもしれない。タイトルは『埋め立て地のゴミ全部買う大作戦』でどうだろう。

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