マイク・タイソンの東京ドームの試合を観た人、いますか?
ファミコン版『パンチアウト』でマイク・タイソンを2分切りKO。5年間/7.5万回かけて実機で達成

1987年、任天堂はゲームセンターで人気だったボクシングゲーム『パンチアウト!!』をベースに、最後の対戦相手キャラクターを当時無敵を誇ったヘビー級プロボクサー、マイク・タイソンに置き換えたファミコン用タイトル『マイクタイソン・パンチアウト!!』を発売した。
このゲームに登場するマイク・タイソンは非常に強く、子どもの頃にチャレンジしたものの、結局倒せずじまいだったという人も多いのではないだろうか。
もちろん、絶対に倒せないというわけではないので、わずかなプレイヤーはこの強敵をマットに沈めることに成功しただろう。だが、このタイソンをゴングから2分以内に倒すことができた人はいただろうか。その途轍もない(世界初の)記録が、先日達成された。
ゲームプレイヤーの間では、いかに短時間でゲームをクリアするかを競うスピードランというプレイスタイルがある。日本ではReal Time Attack(RTA)という和製英語で呼ばれることが多いこのプレイスタイルの人気プレイヤーSummoning Salt氏が、「足かけ5年のあいだに7万5000回ものチャレンジ」を繰り返した末に、ゲーム中のマイク・タイソンを、1分59秒97というタイムでノックアウトしたのだ。
本人いわく、この速度でタイソンをTKOに持ち込むには、21発もの「完璧なタイミング」のパンチを繰り出し、ヒットさせなければならないという。「完璧なタイミング」がどれほど困難かを説明すると、秒間60フレームで動作するコンピューター画面の、正しいフレームで常にパンチを当てなればならないということだ。パンチのタイミングが前のコマにズレれば威力が減少してしまい、後ろに遅れれば、タイソンがパンチをブロックしてしまう。
さらに、タイソンが放ってくるパンチをかわすときも、ただ避けるだけでなく、素早くカウンターを打ち込めるように考えて操作する必要があるという。Summoning Salt氏は記録達成時、真の意味で完璧なプレイからは全体で7フレームのズレがあり、KOタイムでは0.35秒をロスしたとしている。
ゲーム中、タイソンはパンチを繰り出すパターンがループする際にランダムに動きを止めることがある。この停止時間は最大で8秒にもなるときがあるのだが、8秒も停止していれば、スピードランは絶対に失敗する。しかし、Summoning Salt氏の最後のチャレンジでは、幸運にも停止時間をすべて最小の8フレーム、時間にして約0.4秒で終わらせられたとのことだ。
さらにこの試合では、タイソンが開始直後に「完璧なパターン」でアッパーカットを繰り出したことも幸運だった。本人は、この「完璧なパターン」が発生するのは、1/7000~1/1万の確率だと主張している。
スキルと運の両方が味方したSummoning Salt氏の新記録は、ゲーム内の計測で2分00秒00という彼自身が持つ世界記録をわずかに更新した。だが彼は、2020年に初めて2分00秒台を記録して以来、何万回もの挑戦中にたった15回しかない2分00秒台と、1分59秒97のプレイの間には本質的な違いはないという。それはつまり、運の要素も相当に効いているということだろう。
今回の記録はゲーム機実機で打ち立てられたものだが、スピードランにはハードウェアをPC上のソフトウェアで再現するエミュレーターを用いて、ハードウェアのコンディションに左右されずに理論上のベストタイムを争うツール支援によるプレイ方法もある。そして、このやり方における、『マイクタイソン・パンチアウト!!』のKOタイムは、1分58秒61だ。
だがSummoning Salt氏は、もう伝説のチャンピオンへの挑戦には満足しているようだ。「おそらく自分より強運に恵まれた人が現れ、いつか追い越していくだろう」とSummoning Salt氏は述べ、「それでも、タイソン相手に史上初の2分切りを達成できたことを誇らしく思うよ」とした。
- Source: Summoning Alt(YouTube)
- via: Ars Technica