AltStoreは「アップル承認」を強調

EUのiOS代替アプリストア、初のポルノアプリ配信。アップルは深い懸念を表明

Image:c1d3r/AltStore

EU域内においてデジタル市場法(DMA)が施行されたことで、アップルはEU市場での代替アプリストア(App Store以外の他社が提供するアプリストア)の許可を余儀なくされた。そうした代替アプリストアで初のポルノアプリが配信開始されたことにつき、同社は批判を表明し、App Storeでは配信しないと述べている。

代替アプリストアのAltStoreは、「Hot Tub」というアプリをEU域内のiOSユーザー向けに提供開始したと発表し、「アップルが承認した初のポルノアプリ」と述べている。本アプリは以前から脱獄(システム的な制限やセキュリティの回避)により利用できたが、ネイティブで使えるのは初めてのことだ。

この件につき、アップルは複数のメディアに声明を発表。「この種のハードコアポルノアプリがEUユーザー、特に子供たちにもたらす安全上のリスクを深く懸念している。このアプリや同様のアプリは、我々のエコシステムに対する消費者の信頼と信用を損なうものだ」と批判している。

また「アップルが承認した」との表現に対して「虚偽の主張」であると否定。「我々は断固としてこのアプリを承認しておらず、App Storeで提供することなど決してない」と述べつつ「欧州委員会の要請により、このアプリの配信を許可せざるを得ない状況にある」と付け加えている。

実際、App Reviewガイドライン(5.2.4)では「Appleがアプリのデベロッパまたはサプライヤーであると示唆または暗示したり、Appleが品質または機能に関して特定のアプリを承認していると示唆または暗示すること」は認められないと明記している

アップルは自社のApp Storeでは「あからさまに性的またはポルノ的な素材」を禁止している。かつてスティーブ・ジョブズは、規制に疑問を呈する顧客のメールに返信し、自社には「iPhoneからポルノを排除する道徳的責任」があると述べ、そうしたアプリを探す人々は「Androidフォンを買えばいい」と述べていた

もっとも、アップルは代替アプリストアで配布されるアプリについても「公証」プロセスを課している。これは同社がアプリを自動および手動でチェックし、悪質なソフトウェアではないかを確認する手続きだ。AltStoreはそれを「承認」と呼んでいるのだろう。通常のApp Store審査はコンテンツの内容まで踏み込むが、公証では対象外である。

またアップルは、App Storeで配布されるアプリに適用されるコンテンツ制限は、EU域内でのみ配布されるアプリには適用されないと強調していた。その例としてアダルトコンテンツやポルノを挙げていたことを、宣伝として逆用されたのかもしれない。

AltStoreのほか、長年にわたりアップルと敵対しているEpic Gamesも、EU域内でiOS向け代替アプリストアを公開し、アプリの配信を開始した。無料アプリについても、アップルが開発者に課す「コア技術料」を自社が肩代わりする方針も打ち出している。

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