ヤバい代物

目標出力5000馬力?! 12ローターの化け物ロータリーエンジンをYouTuberが製作

Image:Rob Dahm/YouTube

YouTuberのRob Dahm氏は現在、世界で唯一というトリプルターボ付き12ローターロータリーエンジンに火入れをしたところだ。

このエンジンはいまから10年程前、Apex Manufacturing & DesignのTyson Garvinなる人物が、自らが出場する競技用パワーボートに搭載するために自作したものだ。

なぜGarvin氏がこんな物を作ろうと思ったかと言えば、単に自身が出場しようとしていたパワーボートに搭載されているシボレー製エンジンよりも、もっとパワーが欲しかったからだ。そのため、このエンジンは最初にボートに搭載されていたエンジンのマウント位置に合うように設計されている。

当時、その製作過程は、インターネット上ではそれなりに話題になった。だが、なぜかGarvin氏はこのエンジンをパワーボートに搭載することはなかった。また、なにか他のプロジェクトでこのエンジンを使用することはなかった。

実際に使われることはなかったものの、ベンチテストまでは行われており、レギュラーガソリン(オクタン価87)使用でエンジン回転数8500rpmのときに約1400hp(1419PS、1044kW)という出力を記録していた。Garvin氏によれば、このエンジンは回転数1万4000rpmで最大出力3600hp(3650PS、2685kW)に到達するとのことだった。

Rob Dahm氏はマツダRX-7(とランボルギーニ)を愛し、自身のYouTubeチャンネルでこれまでにいくつかのロータリーエンジン(過去の最大は6ローター)を自作してきたほどの、ロータリーエンジンマニアだ。

そして彼は最新のプロジェクト(と言っても開始したのは1年半前だが)で、Garvin氏から件の12ローター・ロータリーエンジンを借り受け、再びそこに命を吹き込み、ターボチャージャーを追加して5000hp(5069PS、3728kW)を出力させることを目標にした。

このエンジンは簡単にいえば4ローターのロータリーエンジンが3つ、合体したような格好をしている。そしてそのバンクごとにギャレット製のG55ターボチャージャーが搭載され、ターボ1基あたり40PSI (2.76bar) 超の過給圧でブーストする。

Dahm氏は、3つのターボチャージャーを吸気系に装着するために、オリジナル設計から燃料レール(噴射装置へ燃料を安定供給するための部品)や排気系統の再設計をする必要があった。7075アルミニウム(超々ジュラルミン)の固体ブロックから削り出して製造されたエンジンブロックをはじめ、燃料レール、吸気マニホールドはすべてアルミ製であるため、排熱には細心の注意が払われている。また、可能な限りその容積が均一になるように考えられた排気管の設計はかなり複雑な形状になっている。

組み上げた12ローターのエンジンは、昨年11月には火入れを行うところまで来た。だが、その後分解したエンジンをチェックしたところ、Dahm氏のチームはローターハウジングに対するローターのクリアランスが悪いことに気づいた。ロータリーエンジンにとってローターとハウジングのクリアランスは燃料圧縮や燃焼を左右する重要な要素だ。そのため、チームはローターをミクロン単位で研削して調整した。

Image:Rob Dahm/YouTube

今回の試運転の数日前には、ターボを搭載したエンジンを始動しようとした際にバックファイアが発生してインテークマニホールド周辺が吹っ飛ぶという、派手なトラブルを起こした。そのため、今回のテストでは少々慎重に事を進めたようだが、ブーストを6PSI(0.41bar)、エンジン回転数を7700rpmまで上げても問題なく回ることが確認できた。ターボの回転数は4万7000rpmだった。最終的にエンジンは9000rpmまで回すことができたとのことだ。

現在、Dahm氏はこの怪物ロータリーエンジンをテストベンチに乗せ、どれぐらいの出力を引き出せるのかを確認するために準備しているという。また動画の最後では、このエンジンを何かに搭載して動かすことも考えていることを示唆している。

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