マイクロLEDディスプレイなどの基礎技術は開発続行
アップル、Macと接続する“メガネ型ARデバイス”開発中止の報道
ここ数年にわたり、アップルはメガネ型のARデバイスを開発中だと噂されてきた。だが、少なくともMacとペアリングして使うタイプは棚上げしたと米Bloombergが報じている。
アップルの内部情報に詳しいMark Gurman記者によると、キャンセルされた製品(コード名「N107」)は普通のメガネのように見えたが、ディスプレイが内蔵されていたという。ARアプリを動かすのに十分な性能を持つチップは、メガネの大きさに収めるのは困難なため、Macとペアリングして処理を任せる方式を選んだようだ。
かつてアップル社内でメガネにプロセッサーの内蔵を検討したところ、iPhoneの10分の1程度の消費電力で、iPhoneと同等の性能を発揮できる必要があると判断されたと報じられていた。消費電力を小さくするのはバッテリー容量の制限と、オーバーヒートを防ぐためだ。
アップルは当初、iPhoneとペアリングを望んだものの、処理能力がネックになった。そこでMacとリンクする方向にシフトしたが、最終的にはパフォーマンスが不十分だったため、プロジェクトは中止になったとのことだ。
このキャンセルされたARメガネは、Vision Proよりも軽くてヘッドストラップも必要なく、両眼の視野に情報、画像、動画を表示できる高度なプロジェクターを備えていたという。装着者の目元を映す前面ディスプレイ(EyeSight)はなかったが、仕事中など周囲の人に知らせるため色合いを変更できるレンズも開発したと伝えられている。
かつてGurman氏は、ARメガネの開発はティム・クックCEOを喜ばせるためだけの「絶望的な」プロジェクトだったため、アップル社内でジョークのネタになっていたと伝えていた。2017年当時、クック氏も自らARメガネを「質の高い方法」で作れる「技術そのものが存在しない」と語っている。それは、今も変わっていないようだ。
ARメガネの開発は一時中断したが、アップルはVision Pro後継モデルに取り組んでおり、技術さえ確立されれば、経営陣はARメガネ開発の再開を望んでいるという。また、将来的にARメガネに使えるマイクロLEDディスプレイなどの基盤技術の開発を続けているとのことだ。
アップルとAR/VRで競合するMetaは、「真のARメガネ」をうたう製品「Orion」をデモしていた。このメガネはまだ試作段階であり、製造コストは1万ドルを超えている。Metaは2027年に発売する予定だが、アップルも開発中止したN107につき2027年発売を目指していたと言われている。