イタリアではDeepSeekアプリがDL不可に

中国DeepSeek、AI訓練に「OpenAIのAIモデル」を無断活用した疑い。規約違反で調査中

Image:Stock all/Shutterstock

中国発のチャットボット「DeepSeek R1」が米国のAI業界を揺るがした衝撃のなか、OpenAIがR1の訓練に自社のAIモデルを利用したかどうかを調査していると複数の米メディアが報じている。

The Wall Street Journalによると、OpenAIはDeepSeekが「蒸留」と呼ばれる手法により、同社のAIツールから大量のデータを抽出して技術開発に役立てた可能性を示す兆候を調査していると述べたという。

ここでいう「蒸留」とは、大規模なAIモデルから得た知識を、より小型で軽量なモデルに移すプロセスのことだ。計算コストを削減しつつ推論速度の向上を図れる一般的な手法だが、OpenAIは自社AIを競合モデルの構築に使うことは利用規約で禁じていると主張している。

英Financial Timesに対して、OpenAIに近い関係者は「問題は、プラットフォームから(データを)抽出し、独自の目的で独自モデルを作成するために使用する場合だ」と語っている。

OpenAIはDeepSeekに対してどのような措置を採るかは明らかにしていないが、同社の広報は「技術を保護するために極的かつ積極的な対策を講じており、米国で開発されている最も優れたモデルを守るために米政府と緊密に協力し続ける」とコメントしている。

ホワイトハウスのAI最高責任者デビッド・サックス氏は、この件につき「DeepSeekが行ったことにつき、OpenAIのモデルから知識を抽出したという確かな証拠がある。OpenAIは非常に不満に思っていると思う」と発言。もっとも、具体的な証拠には言及していない。

DeepSeek R1は、米国の主要AIモデルと同等の結果を驚くほど低いコストで達成したとして、テクノロジー業界で広く注目を集めている。同社は開発費用がわずか560万ドル(約8億円)だと主張しているが、これはOpenAIやGoogleなどが投資する10分の1以下である。

より少ないリソースで結果を出せるのであれば、高価なAIハードウェアへの投資は不要ではないか?との疑問が広がり、NVIDIAの株価は一時17%下落し、1日で5890億ドル(90兆円)という過去最高額の時価総額が消えていた。

その一方で、DeepSeek R1に入力したデータは中国国内のサーバーに保存されることから、イタリア当局は消費者連合の苦情を受けて同社にユーザー関連データの扱いにつき情報提供を求めている。その直後、イタリア国内のApp StoreとGoogle PlayストアからはDeepSeekアプリがダウンロードできなくなった

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