意図してやるのは難しいけれど
航空機の軌跡から雪が降る奇跡?が米国で発生
1月25日、米コロラド州デンバーの空港に向かうリージョナルジェットの飛行軌跡に沿って、雪が降り始めるという、不思議な現象が発生した。
この日、スカイウェスト航空が運行するユナイテッド航空5528便は、ノースダコタ州にあるウィリストンベイシン国際空港から離陸し、マイル・ハイ・シティにあるデンバー国際空港に向かっていた。
折からの寒波で気温は低かったものの、空港周辺に降雪はなく、飛行機の後から雪が降り始めたのを地上から見た人はいなかったようだが、気象レーダーには、飛行機が通った軌跡に沿って、雪が降り始めたことがはっきりと映し出されたのだそう。
まるで、飛行機が遅れてやってきたサンタクロースにでもなったかのような話だが、実はこれは意図せずしてクラウドシーディングを実行した形になったために引き起こされた現象と言えるだろう。
クラウドシーディング(Cloud seeding)を直訳すると「雲の種まき」となるが、より直接的な日本語で表現すると「人工降雨」または「人工降雪」が当てはまる。
件の飛行機は、デンバー国際空港にアプローチする際に、行く手にあった雲の中を通過した。その雲には、寒波のせいで過冷却状態になった水滴が多量に含まれていたのだ。
過冷却とは液体が凝固点より低温になっても固体化せずに、液体の状態を保持する状態のことを指す。水ならば、氷点下になっても凍っていない状態だ。しかし、この状態の液体は、何らかの衝撃を加えると接種凍結と呼ばれる現象を起こして急速に結晶化する。
これを雨雲のなかで引き起こすのが人工降雨(人工降雪)だが、そのためには相転移のきっかけになる核となる物質が必要になる。デンバー国際空港付近で確認された降雪は、雲の中を通過した飛行機のエンジンから排出された、微細なすすや金属、炭化水素などの粒子が過冷却された水滴を雪にするための核になったと推測される。
今回は意図せずに人工降雪が発生したのだが、意図してこれを引き起こそうとすると、その難易度は高い。各国の研究機関は数十年前から人工降雨の研究をしており、米国のユタ州は、性的な水不足を解消するために年間1200万ドルを費やしてクラウドシーディングの研究を行っているが、これまでのところ目立った成果が得られていないことが、昨年12月の米国会計監査員(GAO)のレポートで報告されている。
- Source: Washington Post
- via: Jalopnik Interesting Engineering