価格は4万ドルから
ソーラーEVのAptera、ピニンファリーナの風洞で空力アップデートした量産車を発表
電気自動車ベンチャーのApteraは、米ラスベガスで開催中のCES 2025で、太陽電池の電力だけで1日40マイル(約64km)走行可能なソーラーEVの量産モデルを発表した。
この最新モデルは、これまでにApteraが製作してきたプロトタイプから外観的に大きく変わっていないようにも見えるが、高級スポーツカーのデザインで知られるイタリア・ピニンファリーナの協力をえて、同社の風洞を使ったエアロダイナミクスの調整が施され、さらに効率が高められているのが特徴だ。
2006 年にスティーブ・ファンブロ氏とクリス・アンソニー氏によって設立されたApteraは、当初はガソリンエンジンを搭載する超低燃費自動車を開発していた。その最初のデザインから、空気抵抗を極限まで削減するティアドロップ型のボディに収まる後輪と、左右に突き出した2本の前輪が特徴的な3輪自動車という印象的なデザインを採用し、話題にもなっていた。
ただ、同社は資金繰りの悪化など様々な困難に直面し、多額の負債によって2011年には倒産の憂き目に遭ってしまった。
しかし共同創業者の2人はそれで諦めることはなく、2019年にApteraを再び創業した。そしてこの新生Apteraは、かつての試作車が採用していた高効率な空力デザインと軽量な車体をそのまま復活させ、一方でパワートレインをガソリンエンジンからモーター駆動の電気自動車へと大きく方向転換した。車体の空気抵抗を表すCd値は0.13で、これはトヨタ・プリウスの0.27、テスラModel 3の0.23に比べても非常に低い(ちなみにプリウスの最新モデルはデザインを重視した結果、Cd値が先代の0.24よりもやや悪くなっている)。
一般的な電気自動車なら航続距離のためにバッテリー容量を犠牲にするか、大容量にして軽量さを犠牲にしてしまうところだが、Apteraは最低限の大きさバッテリーにとどめつつ、ボディ上の可能な場所ほぼすべてに太陽電池を装着することで、ほぼ太陽光だけで日常的に必要な距離を走行できるソーラーEVへと進化させた。
CES 2025で公開されたApteraのソーラーEVは、市販仕様のシャシーに、ピニンファリーナで磨きをかけたボディを搭載しており、電気自動車メディアのElectrekによると、CES会場での試乗距離は1日20マイル(約32km)を超えていたが、それでも最終的な充電残量は走行開始時よりもプラスだったとのことだ。
ピニンファリーナのモビリティ事業部門の上級副社長、ジュゼッペ・ボノロ氏は「ピニンファリーナでは、常に空気力学を設計の重要な要素としてきた。そのため、Apteraのエアロダイナミクスの検証をサポートし、真にユニークな成果を得られたことを大変嬉しく思っている」と述べている。
量産仕様のApteraは、太陽電池の発電力だけで1日64kmの走行が可能とされている。また、市販用のベースモデルには約644km走行可能なバッテリーが搭載されるが、オプションには、1回のフル充電で1000マイル(約1600km)を走行できるバッテリーも用意されるとのことだ。
自動車としての最高速度は162.5km/hで、通常の0 – 60mph(0-96km/h)加速時間は約6秒、後輪も含めた3輪すべてで加速するLauchモードなら、約4秒とのことだ。
ApteraソーラーEVは4万ドルで予約を受け付けており、2025年中に量産と納入を開始する予定としている。以前は2022年の発売を目標としていたため約2年遅れとなるが、最初の創業から約20年を経て今も変わらず未来的なこの車体が、ついに公道を走り始めることになりそうだ。