異常に高いものはもっと高くなる……?

ビル・ゲイツ、NFT人気は100%「大バカ理論」に基づくと発言。暗号資産には敬遠の姿勢

Image:Paolo Bona/Shutterstock.com

マイクロソフト共同創業者の大富豪ビル・ゲイツ氏が、TechCrunchが開催した気候変動をテーマとするイベントにて、本人が投資対象としている分野についてコメント。農産業や興行、または何らかの製品を作る会社など、目に見えるものを生み出している企業を投資対象として好んでいると述べた一方、NFTや暗号通貨といったブロックチェーンを用いた暗号資産には興味がないと語った。

特に、猿をモチーフにしたNFTコレクションを販売し、その界隈で非常に注目されているBored Ape Yacht Club(BAYC)については「バカ高いサルのデジタル画像が、世界を大きく変えるだろうことは明らかだね」とジョークを飛ばし、どちらも「誰かが私よりも高く買ってくれるという『大バカ理論(greater fool theory)』に100%基づいている」と一蹴した。

大バカ理論と言っても、別に学術的な話ではない。投機の分野、特に人々からの注目度が高い市場では、適正価格を逸脱するほど高い値付けがされた株式や投資対象でも、売買が成立しやすい。一部の人々はそれが適性かどうかではなく、「これだけ高いのならさらに値が上がるだろう」という期待値を含めてそれを手に入れ、売ろうとするからだ。しかし、このような“大バカ理論”に基づいて行動する投資家や企業が増えすぎてバブル状態になれば、遅かれ早かれ、価格が急降下する時が訪れるとされる。

ゲイツ氏は2021年2月にも「私は資金に余裕のない人たちが、こうしたマニアックな話についつい乗せられてしまうのだと思っている」「常識的に考えて、イーロン・マスクのように潤沢な資金があるなら別だが、そうでない人は気をつけるべきだ」と述べ、簡単に価格が乱高下する暗号通貨の不安定さに懸念を示していた。

Bitcoinは、2021年2月当時は値上がりが続いており、4月にはいったん6万3000ドル/BTCに到達した。ところがその後は急落し、7月には約3万ドルに低下。かと思えば、再び上昇に転じて11月には史上最高値を更新する6万4000ドルにまで上がった。

だが、そこからはまた価格は下げ始め、今年初頭で4万8000ドル、記事執筆時点では2万2000ドル前後にまで降りてきてしまった。

Bitcoin以外でも今年5月には、ステーブルコイン(米ドルなど法定通貨と価格連動する暗号通貨)であるはずのTerraが、価格連動を維持できなくなり暴落、また暗号通貨レンディングサービスのCelsiusや取引所のBinanceでは障害が発生して出金停止になるなどして、さらに暗号通貨全体の価格下落を招いている。

また、Axiosの5月末の報告によると、昨年は活況だったNFTの売上げも、いまやピーク時に比べると大きく減っているとのことだ。NFTとは、互いに交換できないトークンのことで、美術品やスポーツコレクションなどのデジタル資産の所有権を証明する方法としてよく宣伝されている。

NFTの多くは2番目に人気が高いEthereumの技術をベースとしている。ゲイツ氏は冒頭のNFTに関する話題でも、こうした暗号通貨やその技術を流用した商品について「関わらない」と述べ、「ロング(買い)もショート(売り)もしない」とした。

暗号通貨やNFTの最近の動向を受けて、巷では暗号通貨の冬の時代(crypto winter)が訪れたとささやかれ始めている。複数の暗号通貨関連の企業は、従業員の採用停止やレイオフなどを発表している。2月にゲイツ氏が述べた懸念は、いま見事に的中していると言えそうだ。

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