4つの新モデルが一気に登場
確かな進化を遂げた“新しいAmazon Kindle”。担当者に聞く「スマホに負けない人気の理由」
Amazon Corporate(以下、アマゾン)が10月に発表した電子書籍端末Kindleシリーズの新製品が好評だ。12月には専用スタイラスペンで電子ペーパーに書き込める「Kindle Scribe」の第2世代モデルも発売を迎える。
個性豊かなラインナップが揃ったKindleシリーズの国内展開と、いまKindleによる読書が人気を集める背景について、アマゾンジャパン合同会社のプロダクト担当である丸山舞氏に聞いた。
ページめくり・画面の明るさを改善
今秋にアマゾンが発売したKindleは4機種。 “読む方専門” の端末が「Kindle Paperwhite」「Kindle Paperwhite シグニチャーエディション」、ならびにベーシックモデルの「Kindle」だ。
Kindleにはブラックのほかに新色の「マッチャ」が加わった。グリーンにホワイトを加えた “抹茶ラテ” のような明るいカラーだ。読書専用端末のフラグシップモデルであるKindle Paperwhite シグニチャーエディションにもグリーン系のメタリックジェードが加わる。
読み書きの両方に対応する第2世代のKindle Scribeは12月4日に発売を控えている。カラーバリエーションにブラック系のタングステンとグリーン系のメタリックジェードがあり、さらにストレージの容量が16GBと32GBから選べる。価格は56,980円(税込)から。
今回筆者はアマゾンジャパンで発売前のKindle Scribeも含めた4つの新モデルを体験した。新しいKindleシリーズは、それぞれにユーザーから寄せられていた改善点の要望にきめこまかく対応してきた印象だ。
上位モデルのKindle Paperwhiteシリーズは特にページめくりのスピードが体感で明らかにわかるほど改善されている。前世代のモデルに対して25%のスピードアップが実現できたという、タッチ操作に遅れることなくページが送られる操作感がとても快適だ。丸山氏によるとシステム全体のパフォーマンス改善を丁寧に図ったことにより、安定的な操作性向上を実現したという。
ベーシックモデルのKindleは「画面の明るさ」が前世代のモデルに比べて最大25%向上している。より明るいフロントライトを搭載したことが機能改善の背景にある。新旧モデルを並べてみたところ、筆者は画面が明るくなったことでテキストのシャープネスが向上して、さらに読みやすくなったように感じる。
フラグシップのKindle Paperwhite シグニチャーエディションは、ベースモデルのPaperwhiteにワイヤレス充電と、さらに周囲の明るさに対してディスプレイの輝度を自動調整する機能がある。
海外に比べて、日本では最上位のシグネチャーエディションを愛用するユーザーが最も多いそうだ。歴代Paperwhiteシリーズよりも画面の大きさが7インチに拡大され、従来のIPX8等級の防水性能も継承する。新色も加えたシグニチャーエディションに買い換え・買い増しするユーザーが増えると思う。
「初めてキンドルを買った」というユーザーが増えている
2024年モデルのKindleシリーズは発売以来、とてもよい反響を獲得していると丸山氏が語る。背景には「読書に集中できる端末・環境」に対するユーザーの興味関心が高まっていることが理由に挙げられる。
「当社独自にユーザーの反響を聞いてみたところ、今回は『初めてキンドルを買った』という方がとても多い印象を受けています。昨今はエンターテインメントが多様化したことで、人々が読書にかける時間が少なくなっていると言われてきましたが、Kindleシリーズへの反響を見る限りでは、特に日本のお客様からはもっとKindleで本を読みたいという強い期待を感じています」(丸山氏)
特にベーシックモデルのKindleには20〜30代のユーザーが多くの関心を寄せているという。動画や音楽をスマートフォンで楽しむ傍ら、「読書」はスマホの通知や通話に邪魔されることなく専用端末で楽しみたいという要望にKindleが応えている。
あるいは筆者のように漫画も含めてもっと本を読みたいけれど、自宅にもう書籍を置くスペースがないという方が「持ち歩ける本棚」としてKindleシリーズを愛用するケースも多い。
アマゾンが展開する「Kindleストア」、500万冊以上の書籍に漫画や雑誌などが定額読み放題で楽しめる「Kindle Unlimited」のサービスも充実してきたことが、ハードウェアのKindleシリーズの普及と新規ユーザーの拡大を後押ししている。
そして2022年に登場した読み・書きができる10.2インチのKindle Scribeがラインナップに加わったことで、Kindleのユーザー層も全体に広がった。
電子ペーパーに「書く」体験を深めた第2世代のKindle Scribe
筆者も初代のKindle Scribeを仕事に使っている。軽く、物理的なページめくりが要らないデジタルノートが展示会やイベントで “立ちっぱなし” になる取材の時にとても役立っている。紙のノートに似た “書き味” が得られることもE-Inkの電子ペーパーを採用するKindle Scribeならではの魅力だ。
ひとつKindle Scribeに注文を付けるとすれば、手で書いたノートのファイルをメールでMacにエクスポートする手順が不便とまでは言わないが、iCloudで即座に同期できてしまうiPadとMacによる連携機能に比べるとまだレベルアップの余地を残していることだ。
レポートや企画書のアイデア出しに、手書き対応のKindle Scribeを活用するビジネスパーソンも多いそうだが、筆者はその用途には手書きノートをすぐにMacで開ける「iPad+GoodNotes 6」の組み合わせを選んでしまう。かたやiPadは長時間片手でホールドし続けると疲れてくるので、先に触れたイベント取材の時のデジタルノートにはKindle Scribeを使い分けている感じだ。
第2世代のKindle Scribeは電子ペーパーの画面周囲に白い枠(ベゼル)が入っている。日本のユーザーを中心に、文字を紙のノートに書き留めて頭に浮かんだアイデアを整理する用途にデジタルペーパーを活用するユーザーが多くいることから、「ノートに書いている感覚を促すデザイン」を意識したのだという。
第2世代のKindle Scribeには「Active Canvas」(アクティブキャンバス)が加わった。横書きの電子書籍の人気の箇所に、手書きのメモを書き込めるユニークな機能だ。筆者もかつてはよく紙の実用書や学術書の書籍に赤線を引いたり、自分の考察を追記していた。電子書籍でも同じような使い方をしたいという声がアマゾンに多く寄せられたことから、Active Canvasが実現した。
初代のKindle Scribeから搭載する付箋やマーカーの機能は変わらず踏襲する。また専用スタイラスペンで書いた直線を、描画後に自動でまっすぐな直線に整えてくれる機能が加わる。
スタイラスペンはKindle Scribeに対応する新旧製品が対応する。またユーザーが複数台所有するKindle Scribeで、それぞれに書いた手書きのドキュメントは同じユーザーのAmazonアカウントにひもづいて同期する。
丸山氏によると初代のKindle Scribeでは、テキストだけでなく「絵を描く」ことに使われるケースも少なくないそうだ。Kindle Scribeは単色表示だが、スケッチや製図の下書きなどの用途であれば十分に用を成す。
初のカラー電子ペーパーを搭載する「Kindle Colorsoft」
海外ではKindleシリーズ初のカラー電子ペーパーを搭載する「Kindle Colorsoft Signature Edition」も発売された。米国をはじめ、英国・ドイツ・フランス・イタリア・スペインから先行販売される。米国での販売価格は279.99ドル(約4万2千円)。
Kindle Colorsoftは “読む方専門” のKindle端末だ。元の電子書籍のデータに記録されているカラーに近い色を表示するE-Inkの電子ペーパーを採用する。なお、ユーザーがコンテンツに着色したり、書き込んだりすることはできない。
日本では2025年の導入が予定されているが、価格はまだ検討中の段階だ。アマゾンジャパンの丸山氏も「漫画や子どもの絵本のような電子書籍コンテンツとの相性がとても良い端末。また新しいKindleユーザーの拡大に貢献するのではないか」と発売に期待を寄せている。
日本国内では4モデルから出揃う新しいKindleシリーズは、全モデルが堅実なレベルアップを遂げた手応えがある。年末から新しいKindleシリーズに触れて体験できるコーナーを設ける家電量販店もあるようだ。明るくなったベースモデルの画面、Paperwhiteシリーズの高速化したページめくりのレスポンス、そしてKindle Scribeの書き味などぜひ実機を手に取って確かめてほしい。